ショパンの出生記録。父ミコワイが息子に「フリデリク・フランチシェクという2つの名前を与える」と表明したという内容が記録されている。赤い枠線で囲んだ部分に「Fryderyk Franciszek」の記載が見える。
ショパンの自筆書簡の一部。右下に見える「Fryc」(フリッツ)はFryderykの愛称形であり、ショパンが友人や親族に宛てた手紙で自称したり、家族が彼に宛てた手紙の中で親しみを込めて呼びかける際によく用いられた。この手紙はショパンが1832年9月10日に間もなく姉の夫となる人物に宛てたもの。

ヨーロッパ人の名前は聖人にちなんだものなど共通のものが多く、それが各言語に応じた形で用いられていますね。そういう意味では、「フリデリク」を仏語圏の人たちが「フレデリック」と呼ぶのも、はたまた独語圏の人たちが「フリードリヒ」と呼ぶのも理解できますし、ある意味では自然なこととも言えます。

さて、では日本語では彼の名前をどう呼べばよいのでしょうか。フランス人と見做して呼びますか? それとも、本来のポーランド人としてでしょうか? ——ショパンを愛する皆さんにこそ、彼への敬意をこめて、是非とも「フリデリク」と呼んでほしいな、と筆者としては強く思います。

ショパンは署名の際、「F.F.Chopin」というように自分のファーストネームを常にイニシアルで書いた。