ショペン? ホピン? 苗字は父方のフランス名が由来

ちなみに、姓のChopinの方ですが、フリデリクのお父さんがフランス人であるためにフランス語の姓となっています。彼は若いうちにポーランドに帰化し、名前もフランス語の「ニコラ」からポーランド語名の「Mikołaj(ミコワイ)」となりましたが、姓はもとの綴りと読みのまま名乗り続けることとなったのです。

Chopinをもしポーランド語的に発音すると「ホピン」となってしまうところですが、ポーランドでは今も昔も、フランス語の響きのままに「ショペン」と呼ばれています。当時から「ショペン」と呼ばれていた証拠に、フリデリクがまだワルシャワにいた頃の新聞・雑誌記事の中に、「Szopen」や「Szopę」と書かれている例を見ることができます。この綴りの通りポーランド語で発音すれば、まさに「ショペン」となるのです。

ワルシャワの日刊紙『クリエル・ヴァルシャフスキ』(1829年3月29日号)に掲載された、ショパンの楽譜出版に関する記事。「Fryderyka Szopę (Chopin)」の綴りを見ることができる(Fryderykaの末尾のaは「~の」の意味を表す格変化を起こしているため)。
病床のショパンも見舞ったポーランドの詩人、ツィプリアン・カミル・ノルヴィトが1865年に発表した詩『ショパンのピアノ』の自筆原稿。冒頭タイトルには「ショパンの」の意の部分が「Szopena」と発音綴りになっている。

さあ、というわけで、皆さんもショパンのフルネームを、ポーランド人に通用する発音で呼んでみませんか? Fryderyk Franciszek Chopin(フリデリク・フランチシェク・ショペン)!

平岩理恵
平岩理恵 ポーランド語通訳・翻訳家

東京外国語大学大学院修士前期課程修了。ワルシャワ大学音楽学研究所に政府給費留学(2001~03年)。ポーランドの舞曲やモニューシュコを研究。訳書 『ショパン家のワルシ...