――これまでに出会った指揮者たちからの影響は?
B 「小澤征爾さんとの出会いが一番大きいですね。私のメンターが小澤さんなのです。彼は、水戸室内管弦楽団、サイトウ・キネン・オーケストラを振るチャンスを与えてくれた。中でもベートーヴェン《第九》の第1、2楽章を私が指揮して、第3、4楽章を小澤さんが指揮するという、何事にも代えがたい素晴らしい経験をさせていただきました。あれは、指揮者としての私の経験のクライマックスの一つでした。
指揮は、プラハの音楽院で学んだこともありますが、一生マラソンを走り続けるのと同じで、毎日焦らずにひたすら勉強を続け、経験を積んでいくものです。それがさらなるエネルギーを生み出し、さらに先へ自分を進めてくれることなんです」
――バボラークさんはこれまで室内楽をとても大切にしてこられました。オーケストラの中でホルンを演奏することと、室内楽の中でホルンを演奏することの根本的な違いとは何ですか?
B 「室内楽の演奏家とは、いわば『夢の職業』です。オーケストラにいると、何年もやっているうちに、同じレパートリーの繰り返しになりがちなところがあって……ただ指揮者が変わるだけみたいな感じなのです。そうした日常の中でソリストとしても、テクニックやエネルギーや向上心を常に維持するのは、正直難しいものがありますよ。
それに対して、室内楽を演奏するということは、シェアができるということなのです。友達と、あるいは生徒や若い人、同じ魂を持った人たち同士が、音楽に取り組むことができる。それこそが夢の職業なんです」
6月11日(日)「ラデク・バボラークの個展’23~若き音楽仲間とともに」でライヒャとタファネルの木管五重奏曲をバボラークとともに演奏する海外と日本の精鋭たち