――これまで、サントリーホールのチェンバーミュージック・ガーデンに何度も参加されています。この室内楽の祭典のどんなところが良いと思いますか。
B 「サントリーホールは、ただ有名なだけではなく、クラシック音楽の殿堂として世界的に本当にトップに立つホールです。そこにこうして何度も参加させていただけることを、とても光栄に思っています。
私にとってこのプロジェクトは、普通の音楽祭ではなくて、世界中のソリストや首席奏者として活躍する人たちが教え、才能ある日本の学生とともに同じステージに立ち、音楽を分かち合えるようなコンサートを行ないたいというお話としていただきました。このアイディアが素晴らしいと思ったのです。
今やこのチェンバーミュージック・ガーデンでは、毎年本当にたくさんのコンサートが行なわれています。それは重要な教育の場であるとともに、聴衆は、多くの若い有望な音楽家たちが世界の第一線で活躍する経験豊かな音楽家と――たとえウィーン・フィルの首席であろうと関係なく――ステージ上で隔たりなく、対等に演奏する姿を見ることができるのです」
バボラークはホルンの世界的スーパースターというだけでなく、現代のチェコを代表する音楽家でもある。チェコの音楽家たちと話す機会があると、いかに彼らがバボラークを誇りに思っているかを感じるほどだ。
しかし彼と話していると、出生地主義にとらわれすぎてはいけない、芸術家はさまざまな土地をめぐるものだということを改めて実感した。
「確かに私はチェコで生まれましたが、ドイツで長年過ごし、イタリアにも住み、そして、実は昨日ロンドンからプラハに帰ってきたところです。そのようにヨーロッパは、言語は違うけれども全部常につながっているものなのですよ」
という彼の言葉からは、多様でありながら一体となったひとつのヨーロッパという強い意識を感じた。
オンラインでの限られた時間内での取材で、バボラークはとてもにこやかに率直に答えてくれた。会話の端々から、独立したひとりの音楽家として鍛錬を続けることへの強い信念を感じた。若い演奏家へのアドバイスも話してくれたが、それは「バンドジャーナル」6月号に書いたので、併せてお読みいただければ幸いである。
今回のサントリーホールのチェンバーミュージック・ガーデンでは、「ラデク・バボラークの個展’23」(6月11日)で、ホルンの音色を楽しめる多彩な作品に加え、木管五重奏のレパートリーもぜひ楽しんでほしいとのこと。ホルンのみならず管楽器の音色やハーモニーについて体験を深められる、充実したコンサートになるに違いない。
林田直樹
日時:2023年6月11日(日) 18:00開演
会場:サントリーホール ブルーローズ(小ホール)
出演
ホルン:ラデク・バボラーク
フルート:瀧本実里
オーボエ:荒木奏美
クラリネット:コハーン・イシュトヴァーン
ファゴット:ミハエラ・シュパチュコヴァー
サントリーホール室内楽アカデミー選抜フェロー
曲目
ライヒャ:木管五重奏曲 ニ長調 作品91-3
モーツァルト:ホルン五重奏曲 変ホ長調 K.407
タファネル:木管五重奏曲 ト短調
パガニーニ:コンチェルティーノ(ファゴット、ホルンと弦楽合奏による)
モーツァルト:アダージョ ハ長調 K.Anh.94 (580a)
ドニゼッティ(ルロワール編曲):オーボエ・ソナタ へ長調(ホルンと室内アンサンブル用編曲)
料金:指定5,500円 サイドビュー4,000円 学生1,000円
問合せ:サントリーホールチケットセンター 0570-55-0017
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