——今年は6月から8月にかけて、ロイヤル・バレエが日本の舞台に登場する機会が多くありますね。6月16日からの「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン」では、フレデリック・アシュトン振付の《シンデレラ》が放映されました。金子さんは仙女役で出演されていましたね。

また、6月24日からは4年ぶりの来日ツアーがあり、さらに、8月11日〜13日にはロイヤル・バレエのダンサーと、アメリカのニューヨーク・シティ・バレエ、アメリカン・バレエ・シアターのダンサーが共演する豪華なガラ公演「The Artists バレエの輝き」が開催されます。

金子 私がロイヤル・バレエに対して入団した1日目から思っているのは、舞台のどこを見ても物語が成り立つような、舞台上のすべての人の演技力が素晴らしい、ということです。本当に素敵なアーティストがたくさんいるので、それをずっと学ばせていただけているのは、とてもラッキーだなと思います。その点で、シネマシーズンの《シンデレラ》は、踊りだけでなく演技もとても楽しめる作品で、シンデレラのお姉さんたちの演技なども面白いので、日本の皆さんにもぜひ見ていただきたいです。

来日ツアーでは、新作の《プリマ》があります。ヴァイオリンが主役の音楽で、それこそ音楽が引っ張っていってくれるような演目です。

ロイヤル・バレエの現役ファースト・ソリストであるヴァレンティノ・ズケッティが4人の女性プリンシパルのために振付けた《プリマ》。音楽はカミーユ・サン=サーンスの「ヴァイオリン協奏曲第3番」

——山田さんは今回の《シンデレラ》で、舞台上でも演奏されたとか。

山田 そうなんです。第1幕でダンス教師と一緒に出てくる、2人のヴァイオリニスト役です。いつもピットの中にいるので、ステージの上で弾いたら緊張するのかな、と思っていたんですが、ダンサーの皆さんの演技を間近で見られる機会はなかなかないですし、私たちも役になりきって弾いていたので、とても楽しかったです。

音楽とともに作り上げる新作

——金子さんは8月のガラ公演「The Artists」でも、《シンデレラ》のパ・ド・ドゥを踊られます。この公演では、ベンジャミン・エラさんの新作もありますね。

金子 全幕もののパ・ド・ドゥは、作品を通しで踊る中での方が踊りやすいんです。ですので、今回のようにガラでその部分だけ、というのは、チャレンジングですね。

新作は今年の1月ごろから振付の作業が始まって、少しずつ作り上げている状態です。私はパ・ド・ドゥが2つ、あと女性だけのダンスなどがあると聞いています。全体がどのようなものになるのか、まだまったく分かっていないので、とても楽しみです。

山田 私も振付をまだ見ていないので、どのような感じになるのか想像がつかなくて。音楽だけを弾くのと、振付と一緒に使われるのとでは、準備の仕方が変わってきますし。

金子 薫さんは音楽を聴いてどのような印象を受けましたか?

山田 シベリウスのヴァイオリン協奏曲や交響曲には、情景が思い浮かぶような壮大なイメージがあったのが、(今回の新作で使用されている)小品だと、もっと可愛らしい感じや、懐かしい思い、初恋とか、そういうフレッシュなイメージを抱きました。

金子 ああ、すごいです。まさにそんな感じの作品です。

山田 そうなの?

金子 はい、素の自分で踊るような。作り上げるのではなく、素のダンサーたちを見るような感覚の作品をベンジャミンが作って下さっているので、楽しい。人間どうしの踊りになっている感じですね。

山田 うん、作りこまない方が良いのかなって。

金子 そうですね。ダンサーも同じ感覚です。

山田 1曲目が、元々はオーケストラのために書かれた劇音楽の《スカラムーシュ》からの〈愛の情景〉という曲なのですが、その曲が私、大好きで。ちょっとオペラチックな、ドラマがあるような感じがするの。

金子 その曲はウィリアム(・ブレイスウェル)とマリアネラ(・ヌニェス)さんが踊るって言ってました。残念!

山田 ベンに「どうしてこの曲にしたの?」って聞いたんですけど、「聴いていてすごく好きだから」って(笑)。

金子 (笑)。

ダンサーにとっての音楽、演奏家にとってのバレエ