——このシリーズをずっと手掛けている末満健一さんの演出で印象的なことは?
七海 末満さんは伝えたいことを言葉ではっきりと言ってくださる方なんです。前作の舞台稽古では「動きではなく、気持ちを届けてほしい」という言葉が印象的で、心を大事に作っていく方なんだなと。そんなところが私にはすごく楽しかったし、末満さんのおっしゃることに応えたいと思いました。
——すでに12作品が上演されている「刀ステ」シリーズ。七海さんが感じる魅力は?
七海 舞台を観る受け手側が、物語について考察できるところです。セリフもどこか暗号めいていて、観終わった後で「このセリフはここにかかっているのかな?」とか考えられるんです。初演から「何かがつながっている」と思わせるので、新作を観ると昔のものを見返したくなったり。そんな部分も魅力かなと思います。
——役を演じるうえで大切にしていることを教えてください。
七海 本作はファンの方が多いので、役の芯の部分は原案のゲームに忠実に作っていきたいなと思っています。ゲームの声優さんの声を勉強することから始めて、自分なりのオリジナリティを作っていきたいです。芝居面では末満さんがおっしゃったように、人の心に残るものを届けていきたい。刀剣男士も源氏物語登場人物らもみんなで心をぶつけあえば、良い舞台になるんじゃないかなと思います。
——次に音楽への想いについて教えてください。最近お好きな曲はありますか?
七海 音楽については、私はあまりながら聴きができないので、聴くときは集中して聴くほうです。移動のときなどによく聴きます。
七海 最近、自分のライブでAdoさんの曲を歌ったことから、Adoさんの歌をよく聴くようになりました。いろんな声を使って歌うところがすごいなって思っています。主題歌を担当された映画『ONE PIECE FILM RED』も観に行ったのですが、まるでライブに行っているような楽しさを感じました。
——宝塚では男役スターとして高い人気を誇りましたが、当時の曲で今も思い出の楽曲はありますか?
七海 なかなか選ぶのは難しいですけれど、自分の退団公演で『霧深きエルベのほとり』という作品に出演したんです。トビアスという役を演じたのですが、最後に舞台の銀橋で「トビアスの旅立ち」という歌を歌ったことは今も心に残っています。
それは演出家の上田久美子先生が作ってくれた歌と演出でした。すごく嬉しかったですし、ファンの方たちも喜んでくれた思い出の曲です。
『霧深きエルベのほとり』舞台映像
——ではクラシック音楽でお好きな曲はありますか?
七海 ラフマニノフの《パガニーニの主題によるラプソディ》。私は、天海祐希さんに憧れて宝塚を受験したのですが、この曲は天海さんの「ある日どこかで」という作品でポイントとして使われていました。初めて聴いたときからすごく美しくて素敵なメロディだなあと思いました。
私にとってクラシック音楽にはドラマ性というか、起承転結があるイメージなんです。最初は静かな感じで始まり、だんだん壮大な雰囲気になっていく感じです。シューベルトの《魔王》とか(笑)。「ラプソディ」にもそんな物語性を感じ、そこが素敵だなと。今も何かの折に触れて聴いたりしています。
ラフマニノフ《パガニーニの主題によるラプソディ》