ピリオド奏法の知識や柔軟性~東京交響楽団の魅力

——東京交響楽団の魅力は、どんなところに感じていらっしゃいますか?

佐藤 まずは相性が良いというところでしょう。演奏の面でも、ピリオド奏法の知識をお持ちの団員の方が多いし、前回の共演の時でもお互いに助け合っていける関係が作れました。意見を交換しやすいところや、チャレンジングな点が魅力ですね。

——今回の定期演奏会では、シュポアは弾き振りをされるとして、ベートーヴェン、メンデルスゾーンではどんなスタイルで演奏されるのでしょうか? 純粋に指揮のみを担うのか、それとも自分もヴァイオリンを弾きながら指揮をするのか?

佐藤 それはリハーサルをしながら決めていきたいと思っています。いちばん大事なのは、その作品の魅力、音楽のイキイキとした所をオーケストラと一緒に伝えていくことだと思うので。

佐藤俊介が東京交響楽団と初共演した「第39回モーツァルト・マチネ」から。このときは、C.P.E.バッハ:シンフォニア 変ホ長調Wq.183/2, H.664、トーマス=リンリー:ヴァイオリン協奏曲 ヘ長調、モーツァルト:交響曲第26番、モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第1番 が演奏された(2020年1月18日・ミューザ川崎シンフォニーホール)©青柳聡

指揮を始めるきっかけとなった「緊急事態」

——今後の活動でも指揮は比重が大きくなりそうですか?

佐藤 指揮を学ぶことは積極的にしていますが、比重を置くかどうかはまだ決めていません。始めてから数年しか経っていないですし。ヴァイオリニストとしての自分を保ちつつ、指揮の技術やレパートリーは拡大していきたいです。

――ご自分ではヴァイオリニストと指揮者のどちらに向いていると思われますか?

佐藤 今年39歳になりますが、そのうち37年間ヴァイオリンを弾いています。ですからヴァイオリンが音楽家としては母国語です。指揮を始めたのは、カンタータの演奏で緊急事態に陥ったことがあったから。ポリフォニー音楽でヴァイオリンを弾き振りすると、1つの旋律にとらわれて全体が見えなくなるのです。その解決方法として指揮を始めたので、焦りながら勉強しました。とにかく表現の手段をたくさん持ちたいということなんです

ヴァイオリンをやっていてよかったと思うことはたくさんあります。たとえばオーケストラ奏者の目に指揮者がどう映るかとか、リハーサルのペースや雰囲気をどう管理するかを体で知っていること。それだけでコミュニケーションの取り方が変わってきますから。

佐藤俊介が東京交響楽団と共演した「 第168回 名曲全集」から(2021年6月20日・ミューザ川崎シンフォニーホール)©青柳聡(写真提供:ミューザ川崎シンフォニーホール)