——インスピレーションを受けたピアニストはいますか?
S.C たくさんいます。たとえばフランスのピアニスト、マルセル・メイエ。あまり知られていないかもしれませんが、彼女のラヴェルの録音は素晴らしいです。
マルセル・メイエ(1897~1958)による「ラヴェル:ピアノ作品全集」。メイエはマルグリット・ロン、リカルド・ヴィニェスらラヴェルと親しいピアニスト、そしてラヴェル自身からも教えを受けた
S.C ただ、録音することを決めてからは、他の人の音源を聴くのをやめました。それらが自分の解釈に影響を与える可能性がありますから。
——ラヴェルの作品の中で、特に好きなものはありますか?
S.C 好きな曲を挙げるのは難しいですが、愛着があるのは、パリに引っ越してから最初に学んだ《高雅で感傷的なワルツ》です。私にとって、パリ留学は初めての海外での経験でした。弾くたびに、パリで苦闘していたあの頃の思い出……ネガティブなものではないけれど、苦しんでいた頃の記憶が、ノスタルジックな感情とともによみがえります。特別な作品です。