第5曲《ターボル》は、15世紀に起こったフス戦争を題材としている。
思想家ヤン・フス(1369-1415)は、聖職者の不道徳を非難し、宗教の改革を唱えたが、カトリックによって処刑された。フスの死後、彼の支持者(フス教徒)がローマの教会と対立し、戦いが起こる。これがフス戦争だ。
ターボルは、プラハの南にある町の名前で、フス教徒の軍事拠点として建設された。曲は、フス教徒の賛美歌「汝ら神の戦士」の旋律に基づいている。歌詞は「神に祈り信ぜよ、神とともにあれば汝らは勝つ」という内容だ。
フス教徒の賛美歌「汝ら神の戦士」
フス戦争はどうなったか。ローマ教皇は、5回にわたってフス教徒を攻める。しかし英雄ヤン・ジシュカが貧しい農民たちを組織したフス教徒軍は士気が高く、いずれも圧倒的な勝利を収めた。
しかし1434年、フス派の中で内紛が起こり、ターボルに本拠を置いたターボル派(急進派)が、カトリックとの和睦を目指すウトラキスト(穏健派)によって壊滅させられる。ウトラキストは自分たちの教義維持を条件としてカトリックに復帰し、フス戦争は終結した。