互いを認め合って、それで音楽になっているというのが、オーケストラのいちばん美しいところだと思う

11 これまでで最大の試練は?

G 気づいたら音楽家になっていたけれど、今やっているN響のコンサートマスターに関しては、自分で決めたことだと思っているんです。そういうこと自体、僕にとっては初めてのことだったし、今までソリストとしてやってきて、オーケストラの世界に行くのも、未知のことではあった。

だから、コンサートマスターとして生き始めてからは、試練といえば試練でした。毎回初めての作品だし、知らないことばかりだし。今もまだ、いろいろと模索しながらという感じ。

――コンサートマスターになったのは、やはりオーケストラの作品を演奏したいというのが、いちばんの理由だったのですね。

G もちろん。やっぱりオーケストラの作品はいいですよ、本っ当にいい曲がたくさんあって。たぶん死ぬまでには弾ききれないくらいたくさんある。

オーケストラはいろいろな人が一緒にやっているってことが、いちばんいいんですよ。それは社会そのものでもある。

互いを認め合って、それで音楽になっているっていうのが、僕はオーケストラのいちばん美しいところだと思う。

もちろん音楽自体も素晴らしいけれど、それを演奏しているオーケストラというひとつの生き物のようなものは、理想郷とまではいわないけれど、人類がこんなふうに互いを認め合えたら、と思わせられる。

――でもオーケストラって、人間関係が複雑でたいへんそうなイメージもあリますけれど。

G だけど、社会人になって、あっれだけの人数で同じことをやるってないじゃないですか。それができるのは、オーケストラぐらいだと思うんですよ。なおかつ、芸術でしょ?

そこに大勢のお客さんが来てくれて、空間を共有している時間って、すごく幸せだと思う。結局、みんなが共同体として繋がっていると感じる時って、すごく幸せな時間だと思う。

コロナ禍以降、より強くそれを感じます。というのも、あの時にみんなの距離がグッと遠くなって……。コロナ禍を経て、今でもまだ壊れてしまったままの部分というのはあると思うので、そういうものを取り戻せていけたらいいなと思う。やっぱり、みんなでやることは、いいことだと僕は思う。

そのいっぽうで、芸術家として、すごく孤独な戦いはし続けていかなければいけないとも思っているけれど。

だから、どちらも、すごく重要なことですね。

12 音楽家を目指す後輩へアドバイスするとしたら?

G 続けてくださいって感じかな。ずーっと続けてください。

13 音楽家が持つべき信念とは?

G それも、続けること

14  10年後の音楽界がどうなっていてほしい?

G うーん……。みんなが、り高みに行けたらいいなと思います。自分も含めて。それぐらいかな。それ以外にはないかな。