沼尻「日本初演の4曲とともに武満徹と三善晃の作品を取り上げるのは、このふたりの音楽が日本の現代音楽を語るうえで欠くことのできないものだからです。
武満さんと三善さんが活躍した時代は、日本の現代音楽に最も勢いがあった時代でした。私は桐朋学園の作曲科で三善門下の学生でしたので、あの時代の現代音楽に対するワクワクした空気を肌で感じていました。
戦後日本を代表する作曲家だったふたりですが、武満さんと三善さんが進んだ道は方向の異なるものでした。武満さんは晩年、より親しみやすい作風になっていきましたが、三善さんは生涯にわたって厳しい作風を貫きました。
作曲を独学で習得した武満さんとアカデミックに学んだ三善さんという違いもあります。武満さんには戦後の日本にアメリカなどから新しく入ってきた音楽の影響が感じられ、三善さんの音楽には強烈な戦争体験の影響が感じられます。三善さんは戦争中、川で遊んでいたときにアメリカの戦闘機の機銃掃射にあい、一緒にいた友人は亡くなったそうです。この出来事は彼の死生観に大きな影響を与えました。『生というのは死から連続していて、海面の上にたまたま現れた氷山のようなものである』というのが彼のイメージです。死者と生者の境界はあいまいだと」。

