沼尻「武満さんは三善さんと同じように戦争を体験している世代ですが、創作においては特に晩年、人間同士の繋がりを描く、温かで柔らかい表現を追求しました。武満さんの音楽からは戦後日本の生気が聞こえてくるようです。
《リヴァラン》を指揮するのは今回が初めてなのですが、2006年2月にサントリーホールで開催された『NHK交響楽団 武満徹メモリアルデー・コンサート』でウラディーミル・アシュケナージさんがこの作品を弾き振りした際に、副指揮者を務めた経験があります。本番ではピアノの脇に座って譜めくりもしました(笑)。このときに、作品をじっくりと勉強したので、いつか自分も指揮をしてみたいと思っていました。
今回小林愛実さんにソロをお願いしたのは、彼女の演奏するロマン派の作品、とりわけショパンを弾くときの音やスタイルが《リヴァラン》にとても合うと思ったからです。ショパン・コンクールの入賞者として、普段からショパンをたくさん弾いている小林さんの音楽性が、武満の作品でどのように作用するのか、とても楽しみです」。

第3部のショーン・シェパードとトーマス・アデスは、ともに今日の現代音楽界でとりわけ高く評価されている作曲家だ。シェパードは2027年度の「武満徹作曲賞」の審査員に内定しており、今後日本でも注目が高まることが予想される。
アデスも2020年度の「武満徹作曲賞」で審査員を務め、2021年1月に開催された同賞関連企画「トーマス・アデスの音楽」では、コロナ禍で来日が叶わなかったアデスに代わり、沼尻が指揮台に立った。その際にソリストを務めたのが成田達輝であり、録音を聴いたアデスは沼尻と成田の演奏を絶賛したと伝えられる。
そんなふたりが、今回アデスの作品で再共演を果たす。
沼尻「シェパードさんに関心を持ったのは、私が尊敬する指揮者のケント・ナガノさんが、彼の作品を高く評価していたからでした。今回のプログラムをサントリーホールのスタッフの皆さんと検討していた際、候補のなかにシェパードさんの作品を見つけて、これは良い機会だと迷わず選びました。
シェパードさんの音楽には奇を衒ったところがなく、今回演奏する《表現抽象主義》もある意味正統的なオーケストレーションが際立つ作品です。そこから生み出される品格あるサウンドは、サントリーホールの響きとも相性が良いと思います」。
