演奏家がクラシックの魅力を伝えきれていない

——クラシックのピアノと接点が少なかった人に、なぜ石井さんのピアノは響くのでしょうか。

石井 まず、ストリートピアノは多くの人に響くと感じています。とある現場でスタッフの方から「クラシックを聞いたことがないけれど、何から始めたらいい?」と聞かれたので、ストリートピアノの動画をすすめました。後日、その方から「コンサートに行ってみたい」と言っていただけて。
潜在的にピアノやクラシック音楽が好きな人は多いのに、どう聞いたらいいのか、どう入門したらいいのか、演奏する側が伝えきれていないと思うのです。僕の場合は、海外で撮影していることが多いので、映像を含めてクリックしたくなるような要素があって、そこからピアノっていいじゃん!となるのかなと。

——クラシックへの入口として、工夫していることはありますか。

石井 聴いた方に熱狂してほしいので、ある程度有名な曲を選ぶように意識しています。《美しき青きドナウ》は海外でも日本でも盛り上がりますね。

——海外と日本では反応は違いますか。

石井 違います。海外の方はよりシビアです。ストリートで弾いている時も、よい演奏の時は拍手や投げ銭が来ます。そもそも海外は大道芸人が多いので、いいと思えば評価するという感覚があるのかもしれません。サービスに対するチップ制度がそのままストリートでも表れていると感じます。観客が自らの感性で評価するという認識があるのでしょうね。