シューベルトの脆さや崩れそうなところに惹かれる

――2次予選ではリストの「ロ短調ソナタ」、セミファイナルではシューベルトの最後のソナタと、振り返ってみれば大変なプログラムを演奏されましたね。

牛田 シューベルトは本当に、巨大で難しい曲でした。この年齢でこうしてコンクールでシューベルトの最後のソナタを選ぶというのは、もしかしたら最善の道ではなかったのかもしれないけれど、自分にとっては神様からの宿題のようなものなのです。ここを辿ることに意味があって、その過程にコンクールがついてきたという感じがありました。

2次の方は、実はもう一つ提出してあったプログラムのほうが選ばれるといいなと思っていたのですが(笑)。

――何を選んであったのですか?

牛田 シューマンの「クライスレリアーナ」と「アラベスク」です。私にとって、シューマンとシューベルトは強く共感し、近いところまで入っていける作曲家なんです。これから時間をかけて取り組んでいきたいと思っています。

――シューマンとシューベルトの何にそんなにも惹かれるのですか?

牛田 どこか脆さや崩れそうなところのある音楽に惹かれるのだと思います。 まだ探究の途中ですからすごく上手く弾けるわけではありませんが、自分で弾いていても、しっくりくるような気がしています。

実際ショパンコンクールのあと、ある審査員の先生が「あなたはフラジャイルな、木の葉が落ちるような儚い音楽が合っているからもっとそういう作品を弾いたら」という言葉をかけてくださいました。確かに自分でもそういう作品への共感は強いと感じています。

▼リーズ国際ピアノコンクールのセミファイナルにおける牛田智大さんの演奏
ケイト・ウィットリー:5つのピアノ小品
シューベルト:ピアノ・ソナタ第21番 変ロ長調 D.960
エイミー・ビーチ:ピアノ五重奏曲 嬰へ短調 Op.67