呼吸とおまじないで心を整える

——首席フルート奏者として意識していることはありますか。

竹山 その時々で最良の自分でいられるように、まずオープンマインドでいることを大切にしています。さらに遠くの音を聴くような意識で耳を開き周りの音を常によく聴くことを心がけています。

——フルートは、ソロもあり目立つ楽器です。緊張する場面ではどのようにしていますか。

竹山 定番ですが舞台に出る前に、手のひらに小さく「人」と3回書いて飲み込むおまじないもこっそりしています(笑)。

それと深くブレスをします。大事なソロや難しいアンサンブルでドキドキが収まらないときは、鼻から長く息を吸って口からゆっくりと吐く腹式呼吸を、演奏中にも静かにやっています。一度鼻から息を吐くとふっと気持ちが落ち着くので、その方法もうまく使って紛らわせています。

東響の仲間は、本番中に膝を撫でたり、少し動いて空気をやわらげてくれることが多いんです。「いい演奏だったよ」と無言で伝えてくれる感じ。それがすごく励みになります。ソロであっても「一人じゃない」と思えるんです。

——東響で尊敬するのはどなたですか。

竹山 尊敬する仲間はたくさんいますが、同じフルートセクションの濱﨑麻里子さんは特別な存在です。ほぼ同い年で、中学生の頃からコンクールで顔を合わせ、東京藝術大学で共に学び、神戸国際フルートコンクールでも一緒に入賞しました。ここで再び巡り合って音楽を共に創れることを幸せに感じています。 

彼女は東響に長く在籍し、ピッコロも担当。久しぶりにいっしょに演奏したとき、ほしいところに必ず音がある演奏に驚かされました。いつも繊細な演奏と、妥協のない姿勢で頼りになる相方です。また、周囲への気配りもあり、そのかわいさらしさもとても魅力的で、ムードメーカーでもあります。

もう一人は客演首席奏者の相澤政宏さん。「新しいフルートセクションをしっかり作ってね」と励ましてくださり、どんなときも相談に乗ってくださいます。

穏やかなお人柄と、長年にわたって東響を牽引されてきた確かな存在感から、周囲からの信頼は絶大です。アンサンブルにおけるリードの仕方も見事で、同じポジションで吹かせていただいているからこそ、そのすごさを強く感じますし、自分もそうでありたいと憧れます。