
——オーケストラの中で意識しているオーボエの役割とは。
荒木 オーボエ首席奏者は、演奏会の最初にチューニングのAの音を出します。その一音でホールの空気や集中力が変わるので、できる限り美しい音を出すことを常に意識しています。本番中は指揮者の動きや他の楽器の響きを敏感に感じ取り、全体の方向性が変わると感じたらすぐに対応するようにしています。全員が一斉に同じ方向へ進めるよう、舵を取る役割も意識しています。
——荒木さんが考えるオーボエの魅力はどこにありますか。
荒木 やはり私も最初に引かれた、オーボエの音色です。リードの機嫌のことや楽器の構造的にも不自由の多い楽器ですが、それでも作曲家がオーボエを必要とし続けたのは、この楽器でしか出せない音があるからだと思います。その音を聴いたときの感情の揺れや、音楽全体に与える影響力が、オーボエの大きな魅力だと思います。
——2023年10月に入団して、もうすぐ2年が経ちます。東京交響楽団の魅力を教えてください。
荒木 メンバーが温かく、柔軟であると感じています。それが音楽作りにも出ています。
たとえば、シビアな場面でも固くならずに、寄り添って「いっしょに行きましょう」という空気があって、誰かを置いていくような雰囲気はありません。それぞれ信念を持っているけれど、本番になると指揮者と共に行こうという純心さを感じます。全員がいい音楽を作ろうという気持ちを共有しているところが魅力です。