チェロは作曲家にも愛された楽器

——プロを志すようになったのは、いつ頃だったか覚えていますか?

内山 はっきり「プロになろう」と決めたタイミングがあったというよりは、気づけばずっと音楽を続けていた、という感覚に近いかもしれません。

学生時代は、正直なところ“勉強をしない言い訳”のような気持ちで楽器に向かっていたこともあります。なんとなく高校の音楽科に入り、そのまま音大にも進みましたが、どんどん上達して、コンクールで賞を取る友人たちの姿を見ていると、自然と刺激を受けていたと思います。

——周囲の環境が、自然と背中を押してくれたんですね。

内山 そうですね。それに加えて、チェロのマスタークラスやセミナーなどで、さまざまな人との出会いがありました。そうした経験を通して、音楽そのものがどんどん好きになっていった実感があります。

——チェロの奏者は、仲のいい方が多い印象がありますが、何か特性があるのでしょうか。

内山 あるように感じています。必須ではないのに、自然と「チェロアンサンブル」が生まれるくらい、チェロ同士で一緒に弾くことが習慣になっているんですよね。チェロはお互いを尊重しながら弾ける関係が、自然と生まれやすいのかもしれません。

——オーケストラの中でほかの楽器をやってみるとしたら?

内山 以前は、持ち運びが楽そうだからという理由で「フルートとクラリネット」と答えていましたが、いろいろ考えて、「もう一度ヴァイオリンをやってみたいな」と強く思うようになりました。

やっぱり花形ですし、どんなにチェロで和声に色をつけたとしても、最終的にメロディーが一番目立ちますよね。そういう役割への憧れは、どこかにあるのかもしれません。ヴァイオリンをやめた経験があるからこそ、挫折とは言わないまでも、少し未練のような気持ちもあるのだと思います。

——では、改めてチェロの魅力はどこにあると思いますか?

内山 まずは音色ですね。とにかく美しいし、ずっと聴いていられる。耳に馴染んで、飽きがこないし、聴いていて疲れない。

オーケストラの中での役割も幅広くて、ベースだけでなくメロディーを担当することもあれば、リズムを引っ張る場面もあります。そこがチェロの醍醐味ですね。

——確かに活躍する場面が多いですよね。

内山 一番好きなのは、チェロに名曲が多いことかもしれません。チェロという楽器そのものも好きですが、それ以上に「チェロが活躍する曲」が好きです。

オーケストラの中でもチェロが前面に出てくる曲がありますし、チェロとピアノによる室内楽にも、好きな作品がたくさんあります。チェロは、作曲家にも愛されてきた楽器なのではないでしょうか。