音楽を「面」ではなく「層」でとらえる

適当なことを書くとお叱りをいただきそうで怖いのですが、私が大きなホールで演奏するときにいつも心がけることを書いてみようかと思います。

作品を演奏するうえで大切な考え方のひとつに音楽を「面」ではなく「層」でとらえるというものがあります。じっさい音楽にはいくつかの層があり(わかりやすいところでは4声体など)、基本的にそれぞれ「主旋律+バス+対旋律+内声」の役割に分かれていますが、これらがお互いに交わらず、それぞれ独立した音質、ダイナミクス(もちろんフレージングなども!)で聞こえるようにするということです。

必要な音量が5だとしましょう(相対的な感覚として)。音楽を面でとらえた状態とは、すべての音を同じように5(あるいはその周辺)で弾いてしまっていることを意味します。いっぽう層でとらえた状態とは、たとえば

主旋律:9

内声:1 – 2

バス・対旋律:6

のように輪郭となる層とそれ以外の層のあいだにコントラストをつくり「集合体として聴いたときに5くらいに聞こえる」ようにすることです。異なる音量や音質を同時に存在させることによって、立体的な響きをつくりだし、和声を美しく機能させることができます。

ときどきフランス作品などでいくつかの層を混ぜ合わせるためにフラットに弾くこともあるのですが、そういう場合は

バス:6

それ以外:2 – 3