ピアノで実現できるレガートの唯一の形を、単純に音量を示す波形で表すと図1のようになります。つまり音が鳴って減衰していく過程の「続きになるように」次の音を弾き始める必要があり、これはディミヌエンドでしかできないのです。クレッシェンドのときには、次の音が出るときのアタックが大きくなりすぎてしまうからです(図2)。
結局のところクレッシェンドというものは、音量は小さくなっているものの音質を深く重くしていく(音の減衰が遅くなるような打鍵にしていく)ことで「だんだんエネルギーが強まっている」状態を表現するしかないのです(図3)。完全に自然な形を見つけるのは本当に難しく、いつも悩みながらフレージングを決めています。