コンクール期間中、コンテスタントにはリーズ大学音楽学部棟とリーズ音楽院、そしていくつかのホストファミリーの所有するピアノが朝昼晩のローテーションで割り当てられ、朝5時過ぎから深夜24時過ぎまで、食事の時間を除けばずっとピアノを練習することができました。
リーズ到着後数日にして、コンテスタントの間ではどの部屋にどのようなピアノが置かれているかという情報が共有されるようになりました。スタインウェイのD274が置いてある200席の小ホール、同じくスタインウェイD274が置いてある8畳くらいの部屋、もっとも数が多いスタインウェイA188かB211が置かれた4畳くらいの部屋、アップライトの部屋、そしてホストファミリーのお宅。
ホストファミリーへの滞在(日帰り)は、気を休めることも兼ねて本番を終えた次の日に割り当てられることになっていたのですが、ピアノについての情報が少なかったことも相まって皆いろいろと予想していました。ことあるごとに「いいか、想像してみたまえ。君は今晩ホストの家に行く。そうしたらまず家主に『ティーはいかが?』と言われてお茶をするだろう。1時間ほど話をしてやっとピアノに触れるが、いきなりミスをしてしまう。そうすると家主が再び言うんだ。『お疲れのようね。ティーはいかが?』とね。そしてまた話をしていると、家主が『もっとティーはいかが?』と言うだろう。そうしたら君は帰らなければいけない!」というネタを披露して、事務局のスタッフに「私の使命はあなたの英国に対する偏見を打ち砕くことよ!」と返されていたコンテスタントもいて、私は彼のことも大好きでした! もちろん実際にはお茶をしなければならないなどということは一切なく、「練習の妨げにならないように、集中できるように」とたくさんのご配慮をいただいていました。