©Marco Borggreve

Q. 指揮者を置かないオーケストラもありますが、指揮者のいる/いない で変わることはどんなことなのでしょうか。

山田 現代の演奏家は本当に優れているので、多くの場合、指揮者がいなくても演奏にそこまで支障は出ないと思います。

でも、ここからが面白いところなのですが、たとえまったく指揮をしなくても、誰かが指揮台に立っているだけで、その人のパーソナリティが演奏に反映されるという興味深い現象が発生するのです。

もちろんその指揮台に立つ人が、うまく指揮をできたり、素晴らしい音楽を伝えられたりすれば、演奏はどんどん良くなるのでしょうが、その部分を差し引いて考える場合には、最後に残るのはその人のパーソナリティになるんです。

一人一人が違った人生を歩んでいることが、音楽の違いとして顕著に現れるのです。

Q. 指揮者によって音(演奏)が変わる、とはどういうことなのでしょうか。

山田 そのパーソナリティの違いによるところも大きいのですが、同じ楽曲であっても、捉え方や理解の仕方やイメージは指揮者によって大きく異なってきます。

そして、リハーサルをどう進めていくのかも、十人十色です。職人的に技術的なアプローチから入る人もいれば、抽象的なイメージを伝えることを軸にする人もいます。
また、演奏会でどう音楽を展開していくのかも、人によってまったく違います。もとより、その団体との相性も大きく関係してきます。

パーソナリティと準備段階とリハーサルと演奏会と相性など、すべての掛け合わせによって、指揮者によって演奏が変わるという現象に繋がっていきます。

Q. 指揮者による違いがよくわかる録音を教えていただけますでしょうか。

山田 一番分かりやすいのは、やはりベートーヴェン交響曲第5番《運命》の出だしではないでしょうか。

帝王カラヤンを基準にして、フルトヴェングラーのちょっと不揃いでありながら緊張感みなぎる感じ、クライバーの颯爽としたスポーティヴな感じを聞き比べると分かりやすいかと思います。