――今回、一番の発見は何でしたか。
佐渡 バッハとヘンデルが、ドイツ北端の港町リューベックに住むオルガンの名手ブクステフーデのところに修行に行く話は興味深かったですね。2人ともブクステフーデの娘さんを嫁にもらってくれないかと言われたそうですが、そういう裏話は知らなかったので。その後、へンデルはイギリスに行ったり、バッハはドイツから離れずにオラトリオを書いたり、活躍する場が変わっていきます。しかし実は、2人ともブクステフーデのもとで学び、影響を受けていたというのは新鮮でした。
――「ストーリー・オブ・クラシカル」はどのように聞いてほしいですか。
佐渡 かなり古い時代、あるいは20世紀に入ってロマン派がどんどん濃厚になって、現代音楽に変わっていく頃は僕も好きなパートです。クラシックが好きは人には、18世紀、19世紀あたりから聞いてもらうといいかもしれません。
僕の友達は、特段クラシック好きではないのですが、聞き始めたらおもしろくて全部聞いたと言ってくれました。僕の声が心地よくて、よく寝られたとか(笑)。
――どのようなことをリスナーに伝えたいと思いましたか。
佐渡 「ストーリー・オブ・クラシカル」は、ものすごく膨大な資料を素晴らしく合理的に出会えるように工夫されています。クラシック音楽は、ものすごく長い年月を経ているジャンルですよね。だからこそ、人によっていろいろな接し方があると思います。喫茶店のバックミュージックのように聞いている人もいれば、しっかり向き合って聞く人もいる。自分を励ましてほしい人もいれば、ロマンチックな気分に浸りたい人もいる。だからいろいろな人の心にクラシック音楽を届けたいという思いもありました。
天才と言われている作曲家にもインサイドストーリーがあり、その作曲家についてもう1歩深く知れたり、曲を理解できたりします。内容が少し難しくても、そこに音楽が聞こえるとより理解が深まります。そして、聞いていくうちに、次の作曲家に繋がっていって、そのうち自分の好きな作曲家にたどり着くこともあるでしょう。そういう出会いも楽しんでほしいですね。