とりわけ印象的だったのが、セットリスト5番目の「ピアノコレクション」。ブラームスの《6つの小品 Op.118 第3番バラード》から始まり、J.S.バッハ《平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第2番プレリュードとフーガ BWV847 ハ短調》、スカルラッティ《鍵盤のためのソナタ ニ短調 K.141》、ショパン《エチュード Op.25 第12番「大洋」》、《エチュード Op.10 第4番 嬰ハ短調》と毛色が異なる作品を、それぞれ約30秒という短い時間で見事にすべり分けたあと、畳みかけるように羽生の珠玉のプログラムともいえるショパン《バラード第1番 ト短調 Op.23》に入る部分。深いエッジワークで緩急をつけながら、1音1音、音を奏でるようにすべっていく。
さらに、楽曲の一部に溶け込んでいくように、4回転トウループをはじめとしたジャンプを次々と披露。《エチュード Op.10 第4番 嬰ハ短調》では、激しく情熱的な旋律にピタリと合ったツイズルで、ショパンの音楽を表現した。