読みもの
2025.10.18
編集部やってみた「ショパコンサイドストーリー」

全米ショパン協会エグゼクティブ・ディレクターのバーバラ・ミューズさんにアメリカでのショパンコンクールについて聞いてみた

三木鞠花
三木鞠花 編集者・ライター

フランス文学科卒業後、大学院で19世紀フランスにおける音楽と文学の相関関係に着目して研究を進める。専門はベルリオーズ。幼い頃から楽器演奏(ヴァイオリン、ピアノ、パイプ...

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第19回ショパン国際ピアノコンクールの会場で、全米ショパン財団のエグゼクティブ・ディレクターを務めるバーバラ・ミューズさんにお会いしました。全米ショパン財団は、毎年マイアミで開催される全米ショパンコンクールを運営しています。2025年1月の大会で優勝したウィリアム・ヤンさんは、今大会でファイナリストに選出されました。

アメリカにおけるショパンコンクールへの取り組みや、すでに全米ショパンコンクールでファイナルで協奏曲の前に《幻想ポロネーズ》をとりいれた感触について教えてもらいました。

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——アメリカでのショパンコンクールの注目度について教えてください。

ミューズ 2025年1月、全米ショパン財団は第11回全米ショパンピアノコンクールを開催し、1975年の第1回大会から50周年を迎えました。2025年大会では、より多くの注目と認知を得るために、クラシック音楽のオンラインインフルエンサーであるベン・ローデ(Ben Laude)氏と提携し、「ショパン・ポッドキャスト」を立ち上げました。

コンクールの開催前の数か月間、ベン氏は財団の名誉会長であり、ワルシャワでの国際大会の審査委員長、そして唯一のアメリカ人優勝者でもあるギャリック・オールソン氏とともに、コンクールで演奏される主要なショパン作品を取り上げて掘り下げていきました。

ベン氏はまた、1月の全米大会のライブ配信の司会も務め、この新たな取り組みの結果として、ライブ配信の視聴者は30万人を超え、YouTubeチャンネルの登録者数も増加しました。

バーバラ・ミューズ
2013年よりショパン財団に従事し、現在はエグゼクティブ・ディレクターを務める。
マサチューセッツ大学で美術史の学士号を取得後、レスリー大学にてアート・アドミニストレーションを専門とするマネジメント修士号を取得。自身もアンサンブルやソロ演奏でプロとして演奏活動も行なってきた。銀行・金融業界での経歴、イベント運営にも豊富な経験があり、財団の運営のほか、大規模なコンサートやフェスティバルのほか、小規模で洗練されたイベントの企画・実施も手がけている。

——全米ショパンコンクールのファイナルで《幻想ポロネーズ》を採用した感触はいかがでしたか?

ミューズ 全米ショパンコンクールでは、国際ショパンコンクールとまったく同じ規定と課題曲を採用しています。そのため、これは過去の大会から大きな変更点でしたが、理にかなっています。ファイナルでは、すべての出場者が同じショパンの協奏曲を選ぶと、どうしてもプログラムが単調になりがちです。

ワルシャワの主催者が説明しているように、ショパンの協奏曲は初期の作品であり、ピアニストの芸術性のごく一面しか示しません。一方、《幻想ポロネーズ》はショパンのもっとも成熟した作品のひとつであり、ソリストにとって非常に高度な要求を課す作品です。

したがって、ファイナルのレパートリーに「オーケストラとの初期作品」と「成熟した多面的なソロ作品」の両方を含めることは、出場者にとって真の試金石となったと思います。

また同時に、審査員や聴衆にとっても試練になります。なぜなら、3人や4人のピアニストが1つのコンサートで演奏する場合、プログラムがかなり長くなるからです。

——アメリカにおけるショパン解釈になにか特徴はあると思われますか?

ミューズ 興味深い質問ですね。ショパンコンクールのような舞台で明確に定義するのは難しいと思いますが、まず、アメリカは多くの国籍や文化的背景が混ざり合う国です。学生たちは、音楽院での学びやフェスティバル、マスタークラスを通じて、世界中の教師から指導を受けています。

そのため、アメリカのピアニストたちも他のアーティストたちと同様に、伝統や作曲家の意図を尊重しながら、自分自身の独自の声を見つける必要があるのだと思います。

 

三木鞠花
三木鞠花 編集者・ライター

フランス文学科卒業後、大学院で19世紀フランスにおける音楽と文学の相関関係に着目して研究を進める。専門はベルリオーズ。幼い頃から楽器演奏(ヴァイオリン、ピアノ、パイプ...

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