ファッションやスポーツにも勝る! ビジネス会話ツールとしての「オペラ」
ビジネスパーソンにとって大切なスキルのひとつは会話術。政治、経済、ファッションに歴史。すべてを内包する芸術「オペラ」を知らずして、成功はあり得ない!?
オペラを楽しみつつ、教養も手に入れる! 自らも企業の貿易部門でビジネスの真ん中で勝負してきたオペラ研究家、岸純信さんの提案です。
腕時計のように「見え隠れする」のが、経験や知恵のお洒落な表し方。人との対話は、ビジネスパーソンの日常に必ず付いて回るから、聴き手は話し手の心を掬い取り、話し手は聴き手の反応ぶりを見抜こうとする。でも、そこで成果を分けるのが、「根太い観察眼」の有無なのだ。自戒を込めて書くけれど(!)、付け焼き刃の知識はバレやすい。実体験が積み重なってこそ、視野は広がり判断力も増す。大きく茂る広葉樹のように、眼力も伸び続けるだろう。
筆者はかつて企業の貿易部門で10年強働き、国内出張も海外赴任もそれなりにこなしたので、会食の席も多く、そこで求められる話題は、スポーツもしくはエンターテインメントに集中した。運動音痴の哀しさで、相槌を打つのがやっとのことも多かったが、そこは笑顔で乗り切って、音楽や文学の軽い話になると、ときどき口を開いたのである。
ただし、そこで鉄則としたのが「言葉を短くまとめる」こと。全部言おうとするとなにも伝わらない。ポイントを絞って話すほうが、相手の記憶にも残りやすいのだ。
オペラの話題でも毎回そう心掛け、話を振られたなら、「モーツァルトの《魔笛》は童話仕立てで子ども連れのお客も多いようです」「ビゼーの《カルメン》では〈ハバネラ〉が愛の呪文になっています」「プッチーニの《トスカ》はスリリングで、映画音楽の祖とも呼ぶ人もいます」「ヴェルディの《リゴレット》の〈女心の唄〉はヒットソングのはしり。CMでもよく使われます」といった調子で切り詰めて答えていた。
ジョルジュ・ビゼー: 「恋は野の鳥(ハバネラ)」~歌劇《カルメン》
ジュゼッペ・ヴェルディ: 「女心の歌」~歌劇《リゴレット》
オペラから拡がる可能性は無限
すると、同席者の発言が増えた。
オペラの題名を出発点に、歴史や文化、音楽、もしくは地理——例えば処女王エリザベスやナポレオンの逸話から、ロシアの民謡に地中海の気候、トルコの進軍によるコーヒーの普及まで——に話題が広がり、会話が明るく続いた。
宮廷文化華やかな頃からオペラ鑑賞が外交に活用されたからか、歌劇場に寄付する欧米の企業は多い。知的な好奇心を煽る総合芸術として、オペラは今でも重宝されているのである。
そこで、ある著名人の率直な感想も並べて紹介しておこう。
「頭が煮詰まると、誰か誘ってオペラを観ます。楽器と声の大音響で、森林浴ならぬ『音浴』というか……確かにリフレッシュしますよ! 客席ではジャケットを羽織っていれば良いんでしょう?」。
これもまさしくその通り。音楽に浸るのも、舞台の迫力に圧倒されるのも、休憩時に酒や会話を楽しむのも人それぞれで決まりはない。全身を揺さぶられる感動も、クスっと笑うひとときも、オペラにはたくさん詰め込まれている。
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