テレビ・アニメ『ピアノの森』でコンクール人気は再燃するのか？

2018年4月よりNHK総合テレビで毎週・日曜深夜に放送中のアニメ《ピアノの森》は、クラシックのピアニストを主人公にした作品。雑誌『モーニング』（講談社）などに2015年まで連載していた一色まこと著のマンガを原作とする。

主人公・一ノ瀬海（いちのせかい）

森に捨てられたグランド・ピアノを玩具代わりにして育った一ノ瀬海（いちのせかい）が、かつて天才ピアニストとして輝かしい経歴を誇っていた阿字野壮介（あじのそうすけ）や、偉大なピアニストの父を持つ雨宮修平（あまみやしゅうへい）たちとの出会いの中でピアノの才能を開花させていき、やがてショパン・コンクールで世界に挑む姿を描く。

小学校の音楽教師となった阿字野壮介

2007年に一度アニメーション映画化されて好評を博したが、今回はスタッフを一新、同局の短編アニメ《想いのかけら》を手掛けたガイナックススタジオの制作にて、改めて全24話で構成されている。

クラシック音楽をテーマにした先輩作品として、かつてドラマやアニメ化、実写映画化を果たし、関連アルバムの発売や企画コンサートの開催などで一大ブームを巻き起こした《のだめカンタービレ》の成功に倣い、本作も現実の演奏家とのコラボレーションが早くもクラシック・ファンの間で話題を集めている。

交通事故によって婚約者と左手の自由を失い、海たちの小学校の音楽教師となっていた阿字野の演奏を担当するのは、デビュー2年目にして全国ツアーでも2万人を動員し、今最も勢いのある若きピアニストの反田恭平。幼少期からピアノの英才教育を受けてきた修平を担当するのは、ウィーン国立音楽大学らに特別奨学生として学びウィーン楽友協会大ホールにもデビューを果たした髙木竜馬。加えてショパン・コンクールでの有力な優勝候補のひとりとなるパン・ウェイを担当するのは同じ中国出身、12歳でサントリーホールにて初リサイタルを行い、現在は名門ジュリアード音楽院で研鑽を積む牛牛（ニュウニュウ）や父親の期待を一身に背負ってコンクールに臨むレフ・シマノフスキを同じポーランド人で、2015年のショパン・コンクールのファイナリストでもあるシモン・ネーリング、芯の強さとモデルもこなす美しさが魅力のソフィ・オルメッソンを同じくフランス・ピアニズムの正統を受け継ぐ美貌のピアニスト、ジュリエット・ジョルノーがそれぞれ担当し、華麗なる演奏シーンを繰り広げる。

もちろん6月にはショパンやベートーヴェン、モーツァルトなど劇中で使用されたピアノの名曲たちを、彼ら世界を舞台に活躍する若き才能たちの饗宴で収録したCDアルバムの第1弾『「ピアノの森」Piano Best Collection』の発売も予定されている。

さらには、海や修平たちの小学生時代の演奏を、オーディションによって選ばれた4人のジュニア・ピアニストが担当していることにも注目。もしかしてこの中から次世代のスター演奏家が誕生する可能性もあるかも……。

また本作では、ピアノ部門のみの国際コンクールとして5年ごとに開催される、世界的にもっとも権威のあるショパン・コンクールが、後半の物語の主要な舞台。毎回多くの日本人が上位入賞を果たしつつもこれまで第1位受賞者は出ていない、このあまりに有名なコンクールの舞台裏を、お茶の間に居ながらにして覗き見ることができるのも大きな楽しみのひとつ。

小学生時代の海（左）と雨宮修平（右）。よきライバルの関係

第156回直木賞と第14回本屋大賞をダブル受賞し、大ベストセラーとなった恩田陸の小説『蜜蜂と遠雷』（幻冬舎）によって、人々の音楽コンクールに対する関心が高まっている。実際に東京文化会館で開催されている東京音楽コンクールなどが昨年、過去最大の集客を記録しており、《ピアノの森》もその波にうまく乗ることができるかも……。

近年、音楽ファンの裾野を拡げることを目指してさまざまな施策を展開し努力を続けているクラシック業界も熱い期待を寄せる本作は、NHKでの放送のほかNetflixで全世界190カ国に向けて独占配信中。これまでの回を見逃した方もぜひ、そちらで！