「第九」で学ぶ!楽典・ソルフェージュ 第1回 五線と譜表
音大受験生や音大生はもとより、楽器や歌、音楽鑑賞を楽しむ人までを対象にした、楽典とソルフェージュの連載がスタートします。国民的人気曲「第九」を題材に、楽しみながら耳を育て、スコア・リーディングにも挑戦! 楽典の学びを実践するエクササイズで、表現力やアンサンブル能力を磨きましょう。
みなさま、こんにちは。
連載を担当する今村央子(いまむら・ひさこ)と申します。国立音楽大学で音楽理論とソルフェージュを担当し、日々、楽典やソルフェージュを楽しく効果的に学ぶ方法を研究しています。
この連載では、ベートーヴェンの「交響曲第9番」(以下「第九」と略)を題材に、楽典とソルフェージュを学びます。
オーケストラのスコアに親しみながら、楽譜を読み取る力、理解する力、聴く力、表現する力を磨きましょう。そして、結果として「第九」の魅力をより深く感じるとともに、学んだことを他の楽曲でも応用できるようになるのが目標です。
本文は、【楽典】と【エクササイズ】に分かれています。楽典の学びを実践することで、音楽鑑賞や演奏に生かすことができます。
連載全体は全14回(基礎編7回、和声編3回、リズム編2回、応用編2回)を予定しています。
【楽典】
1、 五線
五線の各線と線の間は次のように下から第1線、第1間のように呼びます。
上の加線は上第1線、加線の間を上第1間、下の加線は下第1線、加線の間を下第1間と呼びます。
2、音部記号
・ト音記号(渦巻きの中央あたりがソ)
・へ音記号(始点と右側の2つの点の間がファ)
・ハ音記号(記号の中央がド)
の3種類があります。
3、譜表
五線に音部記号が書かれたものを「譜表」と呼びます。
2種類以上の楽器の譜表をまとめたものを総譜(スコア)といいます。
「第九」第1楽章冒頭の弦楽器パートを見てみましょう。
ヴァイオリン(Violino)ⅠとⅡは、第2線にソがあるト音記号の「高音部譜表(ヴァイオリン譜表)」といいます。
ヴィオラ(Viola)は、第3線にドがあるハ音記号の「アルト譜表」です。
チェロ(Violoncello)とコントラバス(Basso)は、第4線にファがあるへ音記号の「低音部譜表(バス譜表)」です。
現在では、合唱の楽譜も高音部譜表と低音部譜表を用いるようになり、ソプラノ記号、メゾソプラノ記号、バリトン記号は、移調楽器を実音で読むときに使われています。
それぞれの譜表と、ピアノの真ん中のドの位置の関係をご覧ください。
コントラバスは、楽譜の音を演奏すると、実際にはオクターヴ下の音がでます。
エクササイズ
「第九」第4楽章の92小節から、「歓喜の歌」の主旋律が導入されます。
1、五線上の位置を確かめながら音を読んでみよう
㋐〜㋙の音符が、第何線、または第何間の音符か答え、その音符を階名(ドレミ読み)で答えましょう。
(答え ①:㋐第4線 ファ ㋑第5線 ラ ㋒第3間 ミ ㋓上第3線 ソ ㋔上第2間 レ ㋕上第2線 ミ ㋖下第1間 レ ㋗下第2線 ラ ㋘第2間 ラ ㋙下第1線 ド)
2、低音部譜表を読んでみよう
92小節から115小節の主旋律を、階名(ドレミ読み)で読んでみましょう。
ちょうどへ音記号の「へ音」=「ファ」から始まります。「ファ ソ ラ ラ ソ ファ ミ」のように読みます。
音が上がったり下がったりするイメージを持ちながら読みましょう。リズム通りに読めるとさらによいでしょう。
3、低音部譜表を聴いてみよう
音源を聴いてみましょう。
チェロとコントラバスがオクターヴで重なっている(オクターヴ・ユニゾン*)のが聞こえますか? *ユニゾン:複数の声部が同じ旋律を演奏すること
また、音源を聴きながら階名(ドレミ読み)で歌ってみましょう。歌う時には、自分の声域に合わせて、オクターヴ上げたり下げたりしてかまいません。
(43:49~)
4、アルト譜表を読んでみよう
116小節から139小節では、主旋律が1オクターヴ高くヴィオラで導入されます。
チェロは、ヴィオラと同じ高さで奏でているので、加線が多く使われていますね。この音域だとアルト譜表は加線が少なく実用的だとわかります。
アルト譜表に初めて接する方も、先ほどと同じ旋律ですので、ぜひ譜読みにチャレンジしてみてください。
ヴィオラの導入とともにコントラバスとファゴットに対旋律が現れます。
音源を聴きながら、対旋律を目で追う→階名(ドレミ読み)で読む→階名で歌う順に取り組みましょう。
(44:35~)
5、聴く耳を育てよう
140小節から163小節では、主旋律はヴァイオリンに移ります。
ファゴットは、2小節休んで、2小節演奏し、旋律の一部分だけを重ねて音色を与えています。
音源を聴きながら、ファゴット・パートを歌いましょう。休んでいる2小節はヴァイオリンのメロディを聴き、よく拍子を数えてぴったり合うタイミングで入ります。
(45:21~)
6、チャレンジしてみよう
116小節からコントラバスが奏でていた対旋律を、140小節から受け持つのは何の楽器でしょうか?
コントラバスの対旋律を、140小節から受け持つのは何の楽器?
(答え:ヴィオラとチェロ)
第2ヴァイオリンとコントラバスには、新しい対旋律が現れます。これらの旋律も読んでみましょう。
コントラバスは長い音価が出てくるので、よく拍を数えながら読んでください。
(45:21~)
今回のまとめ
最後にもう1度音源を再生し、複数の旋律の重なりや音域、音色の違いをよく聴きましょう。
(43:49~)
いかがでしたか? 主旋律以外の旋律を練習すると、楽譜を見る視野が広がり、響きを立体的に聴き取れるようになりますね。
次回(第2回)は「音名と変化記号」です。お楽しみに。
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