子どもの新たな一面を発見、産後の交流の場にも

0歳児からOK! いま求められる親子参加型の音楽ワークショップとは?

インタビュー
2018.03.30

いま、乳幼児から幅広い年齢層まで気軽に楽しめる「音楽ワークショップ」が、にわかに脚光を浴びてきています。

カラダいっぱいに音を感じながら、リズムアンサンブルを行ったり、輪になって歌を歌ったり……。そんな活動をとおして、年齢や目的に応じた音楽の創作体験と、新しいコミュニケーションの機会を図ります。
音楽教育法で有名な「リトミック」とも異なるアプローチで、それまで気づかなかった子どもの個性や変化を発見できるのだとか。

ここでは、国内外の音楽ワークショップの手法を学んできた実力派ユニット「おとみっく」の取り組みをご紹介します。幼少期からクラシックを学んできた、発起人の桜井しおりさん、坂本夏樹さんが、音楽ワークショップにかける思いとは?

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撮影:岩本良介
お話をうかがった人
おとみっく 音楽ワークショップ・チーム
おとみっく
お話をうかがった人
おとみっく 音楽ワークショップ・チーム
2012 年に結成。音楽大学を卒業し、演奏法と国内外様々な音楽教育を学んできた実力派。全国各地で老若男女に向けた幅広い音楽ワークショップやコンサートを開催することで多...
聞き手・文
小沢あや OL / ライター
小沢あや
聞き手・文
小沢あや OL / ライター
企画からやるライター。ウートピ連載「女子会やめた。」「アイドル女塾」のほか、 EngadgetやVOGUE girl等でもコラムやインタビューを執筆中。・ホームページ...

自ら体感し、強烈な衝撃を受けた音楽ワークショップの力

おとみっく坂本夏樹さん(左)、桜井しおりさん(右)

──ずっとクラシックピアノをプレイヤーとして学んでいたお2人が、教育・コミュニケーション分野に目覚めたきっかけは?

坂本:私たちは、東京音楽大学の「ミュージックコミュニケーション講座」という授業で出会いました。そこでロンドンのギルドホール音楽演劇学校から来日した先生の音楽ワークショップを体験し、興味を持ったのです。

それまではずっと1人でピアノに向き合っていたので、みんなで音楽そのものを楽しむことがとても新鮮で。2人とも、人生を変えられましたね。

桜井:大学まで集中的にクラシックを勉強してきて、他のジャンルの音楽を聴く機会も少なかったのですが、音楽ワークショップに参加して、まるで雷に打たれたかのような衝撃を受けました。

音楽って想像以上に、強いコミュニケーションになるんだと。私たちが知っている音楽はごく一部で、ずっと凝り固まっていたんだなって気づかされました。

さらに音楽がもたらす作用は、「明日も精一杯生きよう」と思わせてくれるくらいのパワーをもっているんだと身をもって知ったんです。

リズムでつながる音楽の輪©石田えり(2017年8月9日撮影)

──音楽を使ったワークショップは、音大生にとっても珍しい存在だったんですか? 

坂本:「おとみっく」を立ち上げた6年前(2012年)は、音楽ワークショップをしている人はまだ少なかったですね。

当時も子ども向けのコンサート・プログラムはたくさんありましたが、最初から最後まで参加型で、創造力やコミュニケーションを要する音楽プログラムはほとんどなかったですね。

──「リトミック」との違いや、「おとみっく」の主な目的は何でしょうか。 

坂本:音楽教育法である「リトミック」には、音楽の基礎的能力を伸ばすことを目的に通われる方も多いですが、私たち「おとみっく」は、音楽活動から生まれる「挑戦」や「共同作業」、「関係性」などの過程を通じて、目には見えないけれど、「伝える」という大事な力を養うことを目的としています。
桜井:音楽という授業も近年変わりつつあります。2017年に発表された『学習指導要領』の改訂のポイントに、「主体的・対話的で深い学び」という言葉が導入されました。

実際に小学校へワークショップをしに伺うと、先生方からは創作やコミュニケーションツールに音楽を使ってほしい、というご要望を多くいただきます。これからは、音楽を生み出す過程がより大事だと認知され、広まるのではないかと思っています。

プログラムを通して子どもたちに起きた、日常生活のポジティブな変化

「音と科学の実験室 夏ラボ2017」ミューザ川崎シンフォニーホール&東芝未来科学館©青柳聡(2017年8月5日撮影)
おとみっくと音の旅(2016年8月17撮影)

──「おとみっく」に参加したお子さんには、具体的にどのような変化がありましたか? 

坂本:プログラムの中でとても盛り上がるパートに、1人ずつ順番にタンバリンを叩くものがあります。そういった小さな発表の場をもつことで、手を挙げて自分の意見を言うことに「挑戦」するようになったというお話も聞きます。

また、普段わんぱくなお子さんをもつ親御さんから、「お友だちの分もマラカスをもらいに行けた」とか「きちんと楽器を箱に返せた」など、他人と「共同」することができたり、子どもの意外な一面を見られてうれしい、という感想をいただくことも多いですね。

桜井:幼稚園や小学校での開催が多いのですが、クラスに1〜2人、周囲にうまく馴染めない子がいたりしますよね。

でも音楽ワークショップなら、誰もが主役になれる。教室でいつも静かにしているタイプの子が鳴らした1音が、キラリと輝くアクセントになったりすることで、周りとの「関係性」を築いていくことができます。

坂本:私たちはプログラム中の様子しか見られないけれど、普段から接している親御さんや先生が、子どもたちの変化に驚かれることは多いです。

周囲の大人たちが「この子に、こんな一面があったんだ」と気づくきっかけとしても、音楽ワークショップが活きるのではないかと思っています。

──マナーや協調性を重んじる日本だと、普段は静かにするよう子どもの行動を制限する方向にもっていきがちです。音を出すことが良しとされる場は、子どもにとっても貴重ですね。

坂本:以前ワークショップで、ある男の子がジャンベ(西アフリカの太鼓)を思いっきり鳴らして、生き生きしていたんです。

お母さんも「今日は気持ちよく演奏して発散できたみたいで、とっても機嫌がいいです」とおっしゃっていて。その子は、それをきっかけにドラムを習いにいったそうですよ。

桜井:演奏するとなると、楽譜どおりに弾くとか、決められた音を鳴らすことが多くて、好きな楽器を好きなように鳴らしたり、自分で考えて音をつくる機会は案外少ない。

そこに、子どもが本来もつ興味や個性が表れてくると思います。思い思いに音楽を奏でつつ、それがみんなの音楽になっていく。その過程を大事にしています。

国外のワークショップの手法も取り入れ、日本向けにアレンジ

──プレイヤーとしてクラシックを学ぶのと、音楽ワークショップの運営では、まったく違うスキルが必要ですよね。運営にあたってどんな勉強をしましたか?

桜井:プログラムや手法などの引き出しを増やすために、国内だけでなく、ロンドンのギルドホール音楽演劇学校※1が開催するプログラムや、ポルトガルの音楽施設「カーザ・ダ・ムジカ※2」に赴き、実際に現地で体験しました。

また、国内ではマイケル・スペンサー氏による音楽ワークショップ※3を受講するなど、ありとあらゆるところから手法を学びました。

坂本:まだこれといったジャンルや手法が確立されていなかったので、とにかくトライアンドエラーの繰り返しでした。

本を読んだり先生に聞いたりもしましたが、「100回の練習より1度の本番!」と、 とにかくたくさんの子どもたちの前で実践しましたね。その反応をみて、ブラッシュアップしてプログラムをつくり上げていきました。

 

※1・・・1880年設立で名門と呼ばれるロンドン市立の学校。多くの俳優・オペラ歌手・ピアニストなどがここを卒業しており、ワークショップなどのクリエイティブなスキルを学ぶリーダーシップコースや、音楽療法コースも存在する。
※2・・・世界でも最先端の音楽教育プログラムを実施しているポルトガルの音楽専門施設。カーザ(家)・ダ・ムジカ(音楽)。
※3・・・英国を中心に世界的に活躍する音楽家/ファシリテーター。日本フィルハーモニー交響楽団でコミュニケーション・ディレクターを務める。

──海外から取り入れた手法を、どう日本向けにアレンジしているのでしょうか。

桜井:海外の事例をそのままコピーするのではなく、「いいな」と思った部分を組み合わせて、日本の特色を考えてプログラムをつくっています。たとえば、赤ちゃんのときは海外の子も日本の子も変わらないけれど、日本では幼稚園や小学校に入ると集団行動を学ぶため、シャイになってしまいがちです。

「全部自由にやってください」だと、どうしていいかわからずに固まってしまう。なので、「この中から好きな楽器を選びましょう」など、選択肢を設けてあげるなどの工夫をしています。

坂本:またプログラムは、その場で変更したりもしています。もう何度もワークショップを開催しているので、子どもたちの手拍子ひとつでも、なんとなくそれぞれの個性や気分がわかるんです。「この子は目立ちたがりなタイプ」「この子はやる気がなさそう」とか(笑)。

個々の様子を見て、音の出し方や勢い、目線などを見計らって、プログラムをアレンジしていくと、1回のワークショップでもみるみる顔つきが変わっていくこともあります。

──当日の流れも、その場でアレンジするんですね。

桜井:プログラムの難易度や提案方法をその参加者向けにアレンジします。未就学児が対象のときに必ず入れているのは「はじまりの歌」「またねの歌」ですね。親子で参加していただくことが多いので、それぞれの親子に合わせ、新たなコミュニケーションのきっかけになるような内容を心がけています。
坂本:大まかに、未就学児向けとそれ以上でベースを分けています。未就学児はずっと座っているのが難しいので、身体的活動を通して音楽を感じるパートと、じっくり聴きながら音楽を身体に染み込ませるパートをバランスよく配分して構成します。小学生以上の場合、より楽しんでもらえるように、さらに創作的な要素を増やしています。
私たちも挑戦したいタイプなので(笑)、企業やホールとのコラボレーションや新しい企画の際には、既存のプログラムをもっていくのではなく、主催者側の目的に合わせてイチから作ることもあります。

音楽を通して、みんなのサードプレイスをつくりたい

──クラシックを学んできたお2人だからこその「おとみっく」の強みは?

坂本:クラシックの基礎を徹底的に学んできたからこそ、このようなプロジェクトができていると思っています。「子ども向けだから、これなら理解しやすいだろう」と、勝手に子どもたちのレベルや趣向を想定して安易に選曲したくはないんです。

「誰でも聴いたことがある曲」や「耳なじみのいい曲」という定番があるにはあります。でもそれって、大人側の勝手な想像ですよね。選択肢を狭めるなんて、とてももったいないことだと思っていて。

──確かに、子ども向けの定番曲って、なんとなくありますよね。

坂本:たとえば、変拍子の少し難しいテンポの曲を聴いてもらうと、良い反応があったりするんですよ。そういうおもしろい楽曲がクラシックにはたくさんあるので、小さな頃から幅広い音楽に触れさせてあげたい、と考えています。
桜井:もちろんクラシックだけではなく、ジャズや民族音楽も取り入れています。定番や有名どころを入れるのではなくて、参加してくれる方々がどうやったら楽しめるかを考えています。いろんなジャンルを取り入れて、さまざまなプログラムを行なっていきたいですね。

──「おとみっく」の今後の展望は?

桜井:音楽を通して、親子のため、またもっと広い年齢層に向けたサードプレイス※4をつくりたい。そのために、これからもっと精力的に動いていきたいと思っています。

※4・・・「自宅(ファーストプレイス)」でもなく、「職場(セカンドプレイス)」でもない、自分らしさを取り戻せる第3の居場所のこと。

──お母さんの中には、産後、環境が大きく変わって、孤立してしまう人もいると思います。「おとみっく」は産後ケアの場だったり、交流の場にもなっているのではないでしょうか。

坂本:そうですね。赤ちゃん向けワークショップだと、終わった後にもともと知り合いではなかった親御さん同士が会話していることがよくあります。お家にこもりがちになってしまうお母さんも楽しみにしてくれるような場を提供したいと思っているので、そういう様子を目にすると、やっぱりうれしいですね。

これからも、家族以外で社会と繋がれる場所、みんなにとっての居場所づくりを目指し、大切に育てていきたいです。

 

おとみっく出演イベント情報1
ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2018 「こどもたちの音楽アトリエ」

「こどもたちの音楽アトリエ」は、ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2018期間中の有料公演チケットもしくは半券があれば無料で参加できるイベントです(池袋エリア、丸の内エリアどちらのチケットでも可)。おとみっくの2人は下記の2つのイベントに参加します。 

・有料公演プログラム: https://www.lfj.jp/lfj_2018/performance/

・有料公演チケット購入方法: https://www.lfj.jp/lfj_2018/ticket/

 

音楽劇『ミヨーさんと行く! 新しい世界への旅』

南フランス、プロヴァンス生まれの作曲家ダリウス・ミヨーの物語。彼の人生は旅と友情にあふれていました! フランス、ブラジル、アメリカ⋯⋯ミヨーと一緒にいろいろな国を旅して、ミヨーが作った素敵な音楽を聴いたり、みんなで歌ったり、踊ったりしよう!

 

日時: 2018年5月3日(木・祝)11:30~12:15

会場: 東京国際フォーラム 地下2階 ホールE キオスクステージ

参加対象年齢: ステージ上参加可能:3歳~小学生 ※希望者多数の場合は人数を制限させて頂く場合がございます。

客席参加: 年齢制限なし

保護者の参加について: 客席で参加・見学

持ち物: 可能な方は、ギロ(打楽器)の代わりになるような、表面のでこぼこした物と、棒を持参(例:段ボールの表面をはがした中の波状の部分、ペットボトル、リングノート、洗濯板とペン)

出演者: 関口直仁 (バリトン)、磯野恵美(フルート)、平田彩圭(クラリネット)、野村幸生(ヴァイオリン)、桜井しおり(ピアノ)

申込み方法: 事前申込み不要。当日自由参加(有料公演チケットが必要)

音楽作りワークショップ~どうやって、音楽で雨を描く?~

ハンス・アイスラーは、アメリカに亡命し、劇場音楽や映画音楽も多く手がけたドイツの作曲家です。1929年に『雨』というセリフのない映画のために、「雨を描く14の方法」という作品を作曲しました。みんなも、いろいろな音色の楽器を使って、雨の日のさまざまな風景、雨や水のさまざまな表情を音楽で描いてみよう!

 

日時: 2018年5月4日(金・祝) 14:30~16:15

会場: 東京芸術劇場 5階 ギャラリー2

参加対象年齢: 小学生

保護者の参加について: 保護者の参加不可

保護者の見学について: 見学希望人数によって見学可否を調整

持ち物: 楽器は主催側で用意しますが、自分の使いたい楽器がある人は持参

出演者: 大原裕子(作曲家)、坂本夏樹(音楽ワークショップアーティスト)

申込み方法: 事前応募(有料公演チケットが必要) ※応募多数の場合は抽選とさせて頂きます
※応募方法はラ・フォル・ジュルネTOKYO 2018公式サイトをご覧ください。応募締切:2018年4月15日(日) 23時59分 追加募集がある場合はラ・フォル・ジュルネTOKYO 2018公式SNSでご案内します。

公式サイト: https://www.lfj.jp/lfj_2018/

おとみっく出演イベント情報2
Sing Swing Otomic ─気軽にコーラス優雅な休日─

歌うことに特化したプログラムです。楽譜を使わずに耳で覚えたまま、思い切り声を出し、心もカラダも解放的に。歌いながらリズムを叩いたり、踊ったり、最後には笑顔になれるコーラスの時間です。

 

開催日: 2018年4月15日(日)、5月20日(日)※月1回開催

開催時間: 13:30〜14:30

参加料: 500円 

講師: 金田香織(ソプラノ)、坂本夏樹(ピアノ)

会場: 区民ひろば上池袋

音楽ワークショップ おとみっくと音の旅コンサート 「世界の音をめぐろう」

開催日: 2018年6月30日(土)

開催時間: ①11:00〜 ②14:00〜

入場料: 大人1,500円(中学生以上、小学生以下1名同伴可)、子供800円(小学生以下)

プログラム: 世界の音楽や楽器をめぐる旅。出会った音楽や楽器に合わせて、一緒に身体を動かしたり演奏しながら、世界の音楽と触れ合おう!

出演者: 坂本夏樹(ピアノ)、桜井しおり(ピアノ)、磯野恵美(フルート)、松岡さや子(パーカッション、ヴォーカル)

会場: 千葉市民会館

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