九州交響楽団 首席指揮者 太田弦~就任2年目に向けてまなざす未来
九州交響楽団は、2023年に創立70周年を迎えた九州随一の常設オーケストラ。今年、首席指揮者に太田弦、ミュージック・アドバイザーに篠崎史紀を迎える新体制に刷新し、若きマエストロのもとで新たな第一歩を踏み出しました。オーケストラとの距離がより近くなったと感じているという太田さんに、就任2年目となる期待の新シーズンについて、プログラムや抱負を伺いました。
東京藝術大学大学院音楽研究科博士後期課程修了(音楽学博士)。専門は欧米の音楽理論や音楽美学。著書に『ハイリンヒ・シェンカーの音楽思想―楽曲分析を超えて』(九州大学出版...
九州交響楽団は、1953年に福岡交響楽団として活動を始め、1973年には「九州交響楽団」に改組・改名。以降、九州随一の常設オーケストラとして当地の音楽文化を担っています。2024年3月には、創立70周年を記念して小泉和裕音楽監督(現・終身名誉音楽監督)と東京公演を行ない、九州外にも評判を広げつつあります。
2025年度は、首席指揮者に太田弦、ミュージック・アドバイザーに篠崎史紀を迎えての2年目。年齢や障がいを超えた「夏休みリラックス・コンサート」(2025年8/24)など新企画を増やします。また、シリーズを超えて自由に公演を選べるコンサート会員新制度「選んでとっとーと」(「とっとーと」は「とっておく」の博多弁)を新設。公演体制をリニューアルし、ポジティヴな転換を目指す今後が注目されます。
Gen Ohta, conductor
1994年生まれ。幼少の頃よりチェロ、ピアノを学ぶ。東京藝術大学音楽学部指揮科を首席で卒業。学内にて安宅賞、同声会賞、若杉弘メモリアル基金賞を受賞。同大学院音楽研究科指揮専攻修士課程を卒業。
2015年、第17回東京国際音楽コンクール〈指揮〉で2位ならびに聴衆賞を受賞。指揮を尾高忠明、高関健の両氏、作曲を二橋潤一氏に師事。山田和樹、パーヴォ・ヤルヴィなどの各氏のレッスンを受講する。これまでに国内各地のオーケストラを指揮、今後さらなる活躍が期待される若手指揮者筆頭。2023年4月より仙台フィルハーモニー管弦楽団指揮者に、2024年4月より九州交響楽団首席指揮者に就任
新シーズンで振る定期はユニークな国別プログラム
――太田さんに2025-26新シーズンの聴きどころをうかがいました。
太田 私は、フォーレ、ラヴェル、ベルリオーズのフランスもの第429回定期(2025年4/11)、ブリテンとエルガーのイギリスもの第433回定期(2025年9/15 )、マーラー「交響曲第9番」の第437回定期(2026年2/11)を振る予定で、3公演で国別プログラムになっています。オーケストラとの距離も近くなってきた就任2年目は、1年目よりも少し踏みこんでみようかなと思っています。
――太田さんにとってイギリス音楽とは?
太田 子どものころからイギリス音楽、とくにブリテンが好きです。派手ではないけど、かたちがしっかりしていて、本当に必要なものを必要なだけ書く作曲家。モーツァルトと並ぶ天才だと思います。私は小学生の時にチェロを弾いていたのですが、「シンプル・シンフォニー」を初めて演奏した時に「すごい人だな」と。たとえていうなら、F1カーのように洗練されています。
――マーラーの後半の交響曲も、九響でとり上げる機会は少ないですね。
太田 中学生や高校生の頃、マーラーにドはまりしていました。九響は「第6番」と「第7番」はあまり演奏していないそうです。この2作は好きなのですが、私自身、これまで演奏機会が少なからずあった「第9番」からまず入ろうと考えました。ファクシミリ版が手元にあるので、今後じっくり検討していく予定です。
数年前に指揮者の高関健先生から、神保町の古賀書店(現在は閉店)に「交響曲第2番《復活》のファクシミリ版があったから、買っておきなさい」というメールがあったことも(笑)。
もっと外へ~九響のもつポテンシャルを伝えたい
――今後、挑戦していきたいことや、未来の聴衆へのメッセージをお聞かせください。
太田 長期的には2~3年で九州を一周できるような公演ができればよいと思っています。2025年3月に開館予定の福岡市民ホールも、今後を考えるうえで楽しみです。
演奏面では、どういう方に九響にいらしていただきたいかなど、長期的な目線で考えられるよう経験を積んでいきたいです。オーケストラ団員のオーディションを受けてもらうハードルを下げる工夫もできれば。
先日の11月定期で指揮をいただいたマエストロ・シャルル・
特集Ⅱ オーケストラの歩きかた
国内オーケストラの2025-26年の聴きどころを一挙紹介。マエストロへのインタヴューや記者会見のレポートなどを通して、各楽団の個性、こだわりのプログラミングをひもときます。
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