3月17日(日)コンサート「山田和樹アンセム・プロジェクト Road to 2020」

200ヵ国以上の国歌と愛唱歌にリスペクトの気持ちで挑む! 指揮者・山田和樹&東京混声合唱団

インタビュー
2019.03.15

なぜ壮大なプロジェクトを始動することにしたのか。200以上の国歌や愛唱歌をすべて歌うのは、想像以上に苦労がともなう。世界を舞台に活躍する指揮者の山田和樹を動かしたのは、自身が音楽監督を務める東京混声合唱団と成し得たい思いもあった。2018年2月、 「山田和樹アンセム・プロジェクト Road to 2020」を発表。すでに演奏会、CDリリースにつづき、2020年の東京オリンピック・パラリンピックへの道はつながってきている。

そして、東京・渋谷のBunkamuraオーチャードホールでのコンサートを控えた3月17日(日)の1週間前、リハーサル現場を取材し、山田和樹や団員に話を聞いた。

取材・文
芹澤一美 音楽編集者
芹澤一美
取材・文
芹澤一美 音楽編集者
音楽療法専門誌「チャレンジ!音楽療法2003」(2002年)「the ミュージックセラピー」(2003年vol.1~2011年vol.20/音楽之友社)の編集・取材・...

♪聴きながらお読みください♪

構想4年、オリンピックを契機に始動!

世界約200か国の国歌全曲と各国のアンセム(=第2の国歌とも言える愛唱歌)を録音し、コンサートでも取り上げていくというプロジェクト、「アンセム・プロジェクトRoad to 2020」が進行中だ。指揮者、山田和樹の発案により、山田が音楽監督を務める東京混声合唱団と、正指揮者を務める日本フィルハーモニー交響楽団が中心となって、東京オリンピックに向けてスタートしたもので、取材日まででほぼ半分くらいまでを録り終えたという。

3月10日、音楽監督・山田和樹と東京混声合唱団の練習場を取材。

このプロジェクトの何が壮大なのか。合唱団の練習を見て、そのスケールが実感できた。

3月17日(日)Bunkamuraオーチャードホールでの「アンセム・プロジェクトRoad to 2020」のコンサートに向けた練習中、何度も確認されていたのが言語の発音。アメリカ合衆国国歌は英語、コモロ連合国国歌はコモロ語、アンセムとして取り上げるグラズノフ作曲《第一次世界大戦の連合国の国歌によるパラフレーズ》とシベリウスの《フィンランディア》は、それぞれロシア語とフィンランド語。

日本語とはまったく異なる特有の発音が求められるため、確認作業も細部にわたる。団員からもメロディにはめていく際の確認や提案、質問が次々に出された。発音指導をしていたコンサートマスター(バス)の徳永祐一さんは、「国によっては、大使館の方に教わったこともあります。できるだけネイティヴな発音で歌うことを目指したい」と語る。

中心となって発音指導をしていたコンサートマスターの徳永祐一さん。

困難を超えるのが音楽

構想から4年を経て、やっと完成の目処が立ったと山田は語る。

「この企画を考えはじめたとき、難しいと思ったのはやはり言語の問題でした。中には日本に大使館のない国もあり、そんなときはインターネットを駆使するなどして、みんなで発音を勉強するための方法をさまざまに考えます。

ある小さな島国の場合は、かつてそこに何年か住んでいたという、日本人を探し当て、合唱の発音を聞いてもらいました。すると『こんなに素敵な国歌を聴いたことはなかった』とその方が涙を流されたんです。このプロジェクトには、そうした素敵な出会いがたくさん生まれました」

指揮者の山田和樹にリハーサル後にインタビューした。東京混声合唱団音楽監督 兼 理事長を務めるほか、モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団芸術監督兼音楽監督、バーミンガム市交響楽団の首席客演指揮者、日本フィルハーモニー交響楽団正指揮者、読売日本交響楽団首席客演指揮者など、飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍している。

アラブ諸国の場合は、文字表記と同じく、右から読む五線譜なのだという。それを左から読む楽譜に書き換え、歌詞も発音から拾って読みやすい表記に置き換える。さらには、それを編曲家が7人がかりで混声四部や、オーケストラ版などに編曲する。気の遠くなるような作業だ。

一時は「できないかもしれない」と思った山田を駆り立てたのは「種々の困難を超えるのが音楽だ」という思いだった。

《フィンランディア》の途中、ハーモニーからユニゾンに移る部分で山田が思わず発した指示は「ここ、統一です」という言葉だった。四声部が1音に集約されていく。それを「統一」と表現し、合唱もそれを受けて美しいユニゾンを響かせる。

その瞬間、歌の力、声の力が何かとつながり、胸が熱くなった。

「われわれ音楽家が譜面を読むとき、ハーモニーが1つになることが、いろいろなものが1つになるというメッセージに見えたりもします。

しかし、歴史や国のあり方はそう簡単ではない。いくら知識として勉強しても、当事者の複雑な心情には永遠に辿り着けませんが、たとえ異なる読み方であったとしても、私たちのアプローチで超えられるものがあれば嬉しい。ですから、よりネイティヴな発音のための最大限の努力をし、尊敬をもってそれぞれの国歌に取り組みたいと思います」

発音については、その言語を得意とする団員からも活発に意見が出る。
歌詞をどのタイミングで入れるのか、発音するときの口の形など、細かな指示が矢継ぎ早に出てくる。
東京混声合唱団は、1956年東京藝術大学声楽科の卒業生により創設されたプロの合唱団。
年間の公演数は150回を数える。

日本の歌も見つめ直す

国歌からその国への興味は広がり、演奏者も聴衆も世界中を旅する感覚になる。と同時に、日本の国歌やアンセムについて考えるきっかけにもなる。

「世界中には、とても芸術的な国歌もあれば、ものすごく長い国歌、個性的な国歌もあります。その中でも、特に独創的なのが日本です。日本特有の五音音階で作られていて、テンポもゆったりしている。これはとても特徴的です。

しかし、子どもから高齢の方まで、みんなが歌える日本のアンセムが意外にもないことに気づきました。《ふるさと》を知らない子どもがいたので調べてみたら、4年生の教科書に載っていたので3年生までは知らないこともあるんですね。この現実を知り、日本にはこんなにいい歌がたくさんあるんだ、ということも伝えていかなくては、と思いました」

「国歌の歌詞の意味はさまざま。『戦い』をイメージさせるものだったり、悲惨だったり幸せだったり、宗教色が入っていたり。アルゼンチンのように長い曲もありますし、美しいけれど古い言葉を使ったアイルランドのような例もあります。国には必ず国歌があるけれど、好かれていなくて国民のほとんどが歌わないということもある」(山田)

年内には録音を終了し、来年の東京オリンピック・パラリンピックの開幕に備えたいと語る山田。

「歌詞を伴って、一つの合唱団が全部の国歌を録音した、となれば世界に例を見ない」という、この壮大な挑戦のゴールを、私たちもしっかり見届けたい。

山田和樹アンセム・プロジェクト Road to 2020
イベント情報
山田和樹アンセム・プロジェクト Road to 2020

日時: 2019年3月17日(日)15:00開演

会場: Bunkamura オーチャードホール(東京都渋谷区道玄坂2-24-1)

出演: 山田和樹(指揮)、西村 悟 (テノール)、日本フィルハーモニー交響楽団(管弦楽)、東京混声合唱団 (合唱)、江原陽子(MC)

曲目:

ワーグナー:「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲

国歌集(君が代、J・ウィリアムズ編曲アメリカ合衆国国歌、コモロ連合国国歌)

グラズノフ:第一次世界大戦の連合国の国歌によるパラフレーズ

武満徹:さくら

信長貴富:アンセム・メドレー

シベリウス:交響詩「フィンランディア」

プッチーニ:「トゥーランドット」より“誰も寝てはならぬ”

ホルスト:組曲「惑星」より“木星”

料金: S席 8,000円、A席 6,000円、B席 4,000円(税込)

チケット問い合わせ: Bunkamuraチケットセンター Tel.03-3477-9999

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