音楽と映画のステキな関係

音楽を愛する三島有紀子監督らしい作品『ビブリア古書堂の事件手帖』

インタビュー
2018.10.26

鎌倉にある古書堂を舞台に、過去と現在の恋物語が交錯していく映画『ビブリア古書堂の事件手帖』。原由子さんの歌声が余韻を残すサザンオールスターズによる主題歌を始め、音楽的にも聴きどころたっぷり。三島有紀子監督の音楽へのこだわりが感じられます。

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ⓒ2018「ビブリア古書堂の事件手帖」製作委員会
Photo:金子由
お話を伺った人
三島有紀子 映画監督
三島有紀子
お話を伺った人
三島有紀子 映画監督
大阪府出身。大学卒業後、NHKに入局。ドキュメンタリー作品などを担当。退局後、『刺青 匂ひ月のごとく』で監督デビュー。映画『しあわせのパン』、『ぶどうのなみだ』『縫い...
聞き手・文
佐久間裕子 ライター
佐久間裕子
聞き手・文
佐久間裕子 ライター
神奈川県在住。映画雑誌の編集を経てフリーに。アイドル誌、エンタメ誌、女性誌などのインタビューを中心に活動。

映画を見終えたとき、どんな気分になってもらいたいかを考えて、映画の最後に流れる音楽を考えるという三島監督。その作品には、音楽を愛する人ならではのこだわりが詰まっています。そんな三島監督に、音楽が映画の中で果たす役割について聞いてみました。

――三島監督は映画の中で音楽が果たす役割について、どう考えていらっしゃいますか?

三島 音楽を聴いている時間は、その音楽に思いを馳せている時間だと思います。だから何となく音楽が流れているという感覚は、私にはあんまりないんですね。そして映画本編を見終えたら、そこから違う世界が始まるという感覚もないので、私はすべてのエンドロールが出きって、映画館が本当に真っ暗になったとき、観た方がどういう気分になってもらえるのかなということを考えて、いつも最後の音楽を考えます。

――『ビブリア古書堂の事件手帖』では最後にサザンオールスターズが手がけた主題歌が流れます。舞台が鎌倉だからでしょうか?

三島 実は私の中では鎌倉といえばサザンというよりも原由子さんのイメージが強かったんですよね(笑)。最後に主題歌をかけるかどうかまだ決めていなかったときに、この映画を観た方には、原由子さんの歌声を聴いたときのような清涼感のある気持ちで映画館を出てもらいたいなという想いがもともとあったんです。そんなときに、プロデューサーから「主題歌にサザンってどうかな?」というお話があって「サザン! ぜひ原由子さんで!」と言ったら、「原由子さんがいいよね」と意気投合し、「じゃあお願いしよう」と盛り上がったことを覚えています。

――ご自身の作品のエンドロールに原さんの歌声が聴こえるのはどんな気持ちですか?

三島 まずエンドロールに自分の名前とサザンオールスターズというクレジットが一緒に載っていることが感慨深いですよね(笑)。そしてサザンオールスターズの曲って、良い意味で非情なほど印象的で、映画が終わって何かを感じ取っているお客さんの中にスーッと入って来て、この映画をフラッシュバックしていただけるだろうなと思いました。だからあえて歌がかかるまでの間合いを作りました。主題歌が突然始まるのではなく、5秒という長い静寂があってからこの歌が入っていく。それによって、1本の映画としてフィルムが繋がったという感じがしましたね。

――人間ドラマを表現する上では欠かせない劇伴ですが、『ビブリア古書堂〜』は音がない部分もあり、それがより登場人物たちの感情を表す効果を与えていると思いました。

三島 非常に繊細に音を作っています。録音部のベテランの技師の方が音のミキシングをしてくださっているんですが、音楽とSE(サウンドエフェクト)とセリフ、音をどう演出するかということを、その方と深いところまで話し合って決めているんですね。音楽だけを聴かせて感情を表現するのではなく、すべてを融合した形でどう表現できるかということを目指している感じです。

――編集してからここは音楽が必要だというところをピックアップしていくのですか?

三島 編集するときに、編集部とここで音楽を入れようとか、ここで突然なくそうということを考えながらやっています。わかりやすく言うと、『ビブリア古書堂の事件手帖』では、嘉雄と絹子がキスをするシーンは、音楽がワーッと盛り上がって、ザッとなくなり、1回無音になってゆるやかに波の音が聴こえてくる。そういうことを計算しながら編集していくんですけど、どの音でガッとなくすかを決めるのは録音部さんのセンスだったりしますね。

――そこは信頼してお任せするみたいな?

三島 そうですね。信頼してます。ダビングは一緒に私もやっているので。「ああ、いいですね」、「もうちょっとこうなりますかね?」「じゃあ、もっとこうする?」と話しながら、一緒に作っていくという感じですね。

――音楽にこだわる監督ですが、監督自身の音楽体験の原点を教えてください。

「ピアノとバレエをやっていたので、そういう意味ではチャイコフスキーが基本ベースですね。華やかで祝祭的で、ドラマチックなバレエ音楽が、たぶん私の原体験(笑)。そこから中学ではアメリカ民謡クラブに入って、英語で黒人霊歌を歌ったりしました。英語の先生がソウル&ブルースのレコードのコレクターだったんです。その一方で、映画も4歳から観ていたので、『風と共に去りぬ』など映画音楽も聴いていました。父も兄も音楽が好きで、うちの家のステレオプレイヤーからは本当にいろんな音楽が流れていて、それを父と兄にいちいち解説される小学生時代で(笑)。例えばボブ・ディランの曲を聴いて、これは表面上は恋愛の歌に聴こえるかもしれないけど、実は反戦歌で……とか。いまではどの歌かわかりませんが……(笑)。でも、そこで背景と音楽との繋がりを知ったのかもしれません。映画にかかる音楽というのは、映像という背景が必ずあるから。なので背景があって、この音楽が生まれるという連携が完全に取れていなければ、音楽をかける必要はないと思っています。私は映画の最後に流れる音楽を大事にせざるを得ないのかもしれません(笑)」

――もしご自身の映画にクラシックを使うとしたら、どんな曲を使ってみたいですか?

三島 私、チャイコフスキーって良い意味でも悪い意味でも狂っているなと思うんです。そういう意味で、《花のワルツ》とかで非常に狂った人物を描きたいと思います(笑)。

 

11月1日より公開
映画『ビブリア古書堂の事件手帖』

シリーズ累計680万部突破のベストセラーを映画化。鎌倉にあるビブリア古書堂の店主・篠川栞子は本にかけては人一倍の情熱と知識がある。栞子は優れた洞察力と推理力から五浦大輔が持ち込んだ夏目漱石の『それから』を見て、彼の祖母・絹子が50年前に秘密の恋をしていたと指摘。それが縁となり、大輔は古書堂で働き出す。そんな中、何者かが栞子の大切な『晩年』を奪おうとしていた。

出演:黒木華、野村周平、成田凌、夏帆、東出昌大ほか

ⓒ2018「ビブリア古書堂の事件手帖」製作委員会

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