インタビュー
2024.03.18
特集「ホールへ出かけよう! 2024」

ヤマハホール~銀座の街で、観客にもアーティストにも寄り添う場所

ヤマハ銀座店のビルの中、333席の親密な空間はまるでひとつの楽器のよう......楽器メーカーとしてアーティストへのサポートも万全ながら、親しみやすい企画でお客さまへ寄り添うことも忘れないヤマハホール。2024年はどんな体験が我々を待っているのでしょうか?

取材・文
飯田有抄
取材・文
飯田有抄 クラシック音楽ファシリテーター

1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Maqcuqrie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。2008年よりクラシ...

写真:ヒダキトモコ

この記事をシェアする
Twiter
Facebook

銀座の音楽的シンボル「ヤマハホール」

煌びやかでありながら優雅な風情もあわせ持つ街、銀座。街のシンボルともいえる和光の時計塔から新橋方面へ3ブロックほど歩くと、外観も美しいヤマハ銀座店にたどり着く。その7・8・9階にあるのが「ヤマハホール」だ。

世界的楽器メーカーであるヤマハが「アコースティック楽器に最適で豊かな響き」をモットーに、2010年にオープンしたホール。

座席数は333席と都内では比較的コンパクトな音楽専用ホールであるが、その親密な空間ゆえに、アーティストたちの息遣いまでもが感じられる距離感で演奏を楽しむことができる。

天井や壁、床はメープル、マホガニー、花梨といった楽器に使われる木材で覆われており、芳醇な響きで包み込んでくれる。その空間はまさに一つの大きな楽器だ。

ヤマハホール

気軽に参加でき、心ふるえるコンサートを企画

山田「アーティストのみなさんも、このホールのサロン的な雰囲気を愛し、このホールだからこそ演奏したい曲目を考えてくださいます」

そう語るのはコーポレート・マーケティング部主事の山田美輪子さんだ。

山田「わたしたちは楽器メーカーとして、万全の楽器コンディションでアーティストが演奏に臨めるように寄り添い、本格的でありながらも楽しいコンサート作りをしたいと考えています。ほかでは聴けないプログラムに挑戦するアーティストもいますし、銀座にお出かけになるお客さまが気軽に、優雅な気分で楽しみ、喜んでいただけるような新しいスタイルの演奏会も企画しています」

ヤマハ株式会社コーポレート・マーケティング部主事の山田美輪子さん

そうした催しの一つとして人気を集めているのが「Elegant Time Concert〜上質な時間を貴方に〜」という昼公演のシリーズだ。今をときめくアーティストが登場するコンサートで、2024年は﨑谷直人(ヴァイオリン)と京増修史(ピアノ)のデュオ〈5月16日(木)〉宮田大(チェロ)とジュリアン・ジュルネ(ピアノ)のデュオ〈10月9日(水)〉、そして12月にはスメタナ生誕200年記念プログラムとして福間洸太朗(ピアノ)、成田達輝(ヴァイオリン)、伊藤悠貴(チェロ)のトリオのコンサート〈12月12日(木)〉が企画されている。

左から成田達輝(ヴァイオリン)、福間洸太朗(ピアノ)、伊藤悠貴(チェロ)。2023年11月の公演より

たんに人気アーティストの演奏を聴くだけにあらず。「エレガント・タイム」の夢の続きは、2階のカフェ・ラウンジ「NOTES BY YAMAHA」でも堪能できる。アーティストと過ごす「パーティー」が催されるのだ。演奏直後の奏者たちによるトークを聴きながら、お菓子のセット、紅茶やコーヒー、ワインなどもいただけるという、まさにエレガントなひと時。

コンサートとパーティーのセットプランは特別チケットの抽選申し込みが必要なので、ぜひお早めのチェックを(詳細はこちらのページ下部関連情報)。

2階の「NOTES BY YAMAHA」は、普段は通常のカフェ営業を行なっており、だれでも気軽に利用できる。ブラームスが大好物だったコケモモのジャムを添えたバスクチーズケーキはなめらかな食感、サティのピアノ曲にちなんだ洋梨を使ったドリンクはハーブの香りが新鮮な大人テイスト。棚の音楽本を読んだり、ステージ上の楽器が自動演奏される“Real Sound Viewing”を楽しんだりと、ヤマハらしい空間で過ごすことができる。「銀ぶら」の際にぜひお立ち寄りを。

最高峰のヤマハピアノを堪能しよう

ヤマハといえば、ピアノのイメージが強い方も多いだろう。学校やホール、ホテルのロビーや近年では駅中など、私たちの暮らしに身近なヤマハのピアノたち。その最高峰にして適切にメンテナンスがなされたヤマハピアノの音色を堪能できるのも、ヤマハホールの魅力の一つだ。

山田「昨年はニコライ・ルガンスキーさんや、ピエール=ロラン・エマールさん、ピョートル・アンデルシェフスキさんといった一流の海外ピアニストの方々の公演を数多く開催することができました。333席というキャパで聴くのは本当に贅沢だなという方々ですね。

2024年度も、フランチェスコ・トリスターノさんやポール・ルイスさんといった素晴らしいピアニストの来日リサイタルを行います」(山田さん)

トリスターノの7月の公演は「Piano 2.0 —an evening of the 21st century music for piano and electronics—」〈7月3日(水)〉と題されたコンサート。自作品を含むプログラムで、エレクトロニクスを駆使し、新しいピアノリサイタルのあり方を示してくれそうだ。ピアノの弦に直接触れて音を出すような特殊奏法もなされるかもしれない。実は特殊奏法は、どのホールのピアノでも行なえるわけではない。技術者がいつでもメンテナンスを行なえるヤマハホールだからこそ、アーティストはそのクリエイティヴィティを存分に発揮できるのだ。

ポール・ルイスは全世界25都市をめぐり展開中の「シューベルト ピアノ・ソナタ・シリーズ」〈9月7日(土)・8日(日)〉を、ヤマハホールでも2日間にわたり開催。気品と抒情性あふれるシューベルトの世界にひたりたい。

上:フランチェスコ・トリスターノ ©︎Marie Staggat/ Deutsche Grammophon

右:ポール・ルイス ©︎Kaupo Kikkas

山田「日本のピアニストの公演では、ぜひ『仲道郁代 ベートーヴェン“ピアノ室内楽”全曲演奏会 Vol.4』〈6月30日(日)〉に注目していただきたいです。毎回、若手奏者と仲道さんのアンサンブルが素晴らしく、ベートーヴェン研究の音楽学者・平野昭さんがわかりやすく解説してくださいます」

このシリーズは、2027年のベートーヴェン没後200年を軸に、作曲年代順にピアノ室内楽を演奏していくというもの。第4回となる6月30日のコンサートでは、ヴァイオリニストの岡本誠司が登場。2021年ARDミュンヘン国際音楽コンクールで第1位に輝き、独奏および室内楽で国内外を問わず活躍している。今回の曲目は“スプリング・ソナタ”として知られる有名な「第5番」を含む、「第4〜8番」までのヴァイオリン・ソナタが披露される。

このほかにも珠玉の独奏や室内楽のコンサートの企画が進むヤマハホール。「銀ぶら」の際には、ビル内の楽譜や楽器などの売り場も楽しみつつ、ぜひホールの公演もチェックしてほしい。

ヤマハホール

[運営]ヤマハ(株)

[座席数]333席

[オープン]1953年

[住所]〒104-0061 東京都中央区銀座7-9-14

[問い合わせ]Tel.03-3572-3171(ヤマハ銀座店 インフォメーション)

取材・文
飯田有抄
取材・文
飯田有抄 クラシック音楽ファシリテーター

1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Maqcuqrie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。2008年よりクラシ...

ONTOMOの更新情報を1~2週間に1度まとめてお知らせします!

更新情報をSNSでチェック
ページのトップへ