レポート
2021.12.29
新シーズンも発表!

子どもたちが原田慶太楼・東京交響楽団とコラボ!「こども定期」が多様な参加の場に

子どもたちが客席で聴くだけでなく、演奏やスタッフで本格的に参加できる「こども定期演奏会」。今年20周年を迎え、12月12日にはサントリーホールで第80回の演奏会を終えたが、2022年春からの新シーズンに向けて、大きな実りがあったようだ。
その模様を、以前から見守り続けてきた飯田有抄さんがレポート!

取材・文
飯田有抄
取材・文
飯田有抄 クラシック音楽ファシリテーター

1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Maqcuqrie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。2008年よりクラシ...

メイン写真:演奏に参加した「こども奏者」や東京交響楽団の正指揮者・原田慶太楼さん(前列中央)。
写真提供:サントリーホール

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プロとの演奏会に、子どもたちが多様に関わる!

東京交響楽団とサントリーホールによる「こども定期演奏会」は、その名のとおり、子どもたちが本格的な音楽ホールに通い(1年に4回)、本格的なオーケストラの演奏に親しむコンサートです。

年間のプログラムの表紙絵やテーマ曲のメロディ、サントリーホールの制服を着て活躍する「こどもレセプショニスト」、東京交響楽団と一緒に演奏する「こども奏者」など、子どもたちも一緒にこのコンサート作りに参加できる企画も多く、ますます人気となっています(コロナ下では一部の企画をお休みしています)

本格的な演奏会でありながら、こどもレセプショニストやこども奏者が体験する場として定着した「こども定期」。司会は坪井直樹アナウンサー。
2021年のチラシの絵には、小学校2年生の絵が採用された。

毎回、有名な指揮者たちが登場し、テーマに沿ったユニークな選曲をしています。指揮者と司会の坪井直樹アナウンサーが、演奏の前に聴きどころやポイントなどを「お話」でも伝えてくれるので、80分のコンサートを子どもたちは最後まで集中して楽しんでいます。

さて、「こども定期」は2021年で20周年を迎えました! テーマは「オーケストラ・タイムマシーン」。古典派、ロマン派、そして近現代と、音楽の歴史を旅していくシリーズでした。

今年度最後の12月12日に「近現代」を担当したのは、東京交響楽団の正指揮者に就任したばかりの原田慶太楼さんです。原田マエストロの得意とするリズミカルな舞曲を中心としたプログラムで、客席の子どもたちもノリノリ。会場は熱気に包まれました。

多くの子が初めて聴くようなコープランドの作品(バレエ組曲《ロデオ》より「ホーダウン」)でも、原田さんが「音楽に合わせて足をキックしてみよう!右足4回、次は左足4回……もっと元気に!」などと呼びかけます。ホール全体が楽器になったかのように、みんなのキックする音が一体となって、楽しい演奏になりました。

バレエ組曲《ロデオ》より「ホーダウン」

原田さんは、客席の子どもたちにも、音楽への参加を呼びかけていた。

子どもたちのメロディが若手作曲家の手で作品に~新曲チャレンジ・プロジェクト

またこの日は、「こども定期」として初めての企画もスタートしました。原田さんの呼びかけで始まった「新曲チャレンジ・プロジェクト」です。

子どもたちから短いメロディ(モチーフ)を公募し、それを使って若い作曲家たちがオーケストラ作品を書きます。スコア・音源審査を通じて選ばれた作品が、見事「こども定期」のステージで世界初演されるという企画です。子どもたちのアイデアがオーケストラの響きに乗るということも素晴らしいし、若手作曲家たちにとっては自分の作品を東京交響楽団がサントリーホールで演奏してくれるという、なんとも夢のあるプロジェクト。

記念すべき第1回に選ばれた作品は、小田実結子さんの《La danse des enfants 子供たちの踊り》でした。子どもたちの作った6つのモチーフを取り入れて、今回の課題である「踊り」というテーマを際立たせます。華やかなオーケストレーションと、明るく爽やかな曲想で、子どもたちの素晴らしいコラボレーションが実現しました!

小田実結子《La danse des enfants 子供たちの踊り》世界初演 ※「新曲チャレンジ・プロジェクト」第1回作品

原田慶太楼さん(右)と小田実結子さん(左)、そして「こども作曲家」のみなさん。

16年前のこども奏者が東響のコンマスに!

この日のコンサートは、後半に「こども奏者」も登場です。

この「こども奏者」の参加もまた夢のある企画。オーディションを通過すると、オーケストラのメンバーと一緒にステージで演奏ができるのです。今年はなんと、史上最多の24名のこども奏者が、東響のメンバーとともにハチャトゥリヤンの組曲《仮面舞踏会》の「ワルツ」を演奏しました。迫力あふれる演奏に、会場からは大きな拍手が起こりました。

ハチャトゥリヤンの組曲《仮面舞踏会》の「ワルツ」

驚いたことに、この日の東京交響楽団コンサートマスター小林壱成さんは、16年前に「こども奏者」としてステージに参加していたそうです!

「その年は5人のこども奏者が参加しましたが、みんなとは今でも交流があるんです。今日参加してくれた子どもたちとも、いずれまた一緒に共演することがあるかもしれませんね」とのこと。こども奏者としての楽しかった経験、学び、仲間との交流が、小林さんをプロの音楽家へと成長させてくれる一つのきっかけとなったのかもしれません。

今年の24名のこども奏者は、65名の応募者からオーディションによって選ばれた精鋭たちです。北は北海道の函館、南は九州の宮崎からも参加してくれました。どの子も一生懸命に真剣な眼差しで演奏し、もう立派なオーケストラの楽団員のようでした!

「応募者の人数も増え、年々レベルも上がっていますね。選ばれた子たちは、パート別のレッスン、2回のオケとのリハーサル、そして本番前のゲネプロを経て、本番に臨みます。原田さんは、子どもたちにワルツのリズムを感じてもらうため、自ら踊って見せて、子どもたちも踊らせていました。すると、みるみる演奏が変わっていったんですよ! その変化に応じて、オーケストラの大人たちまで引っ張られて、全体の音が変わっていきましたね。素晴らしいリハーサルでした」

そう語るのは、公演を企画する東京交響楽団の梶川純子さん(支援開拓本部長)です。

原田慶太楼指揮・東京交響楽団のなかに、こども奏者が24名混ざり、ステージに上がった。

終演後には表彰式も行なわれました。一人ひとり賞状をもらいながら、まだ少し緊張と興奮が入り混じった表情を見せてくれました。

原田さんからの「楽しかった人〜!」という呼びかけに、全員が元気に手を挙げていました。また、感謝の気持ちのこもった色紙を東京交響楽団のメンバーに手渡したり、原田さんとニコニコツーショット写真を撮ってもらったり、その雰囲気からは、それぞれにいろんな学びがあったことが伝わりました。

ここから未来の音楽家たちが誕生していくのかもしれません。

終演後、参加した子どもたちに賞状を渡し、お話をする原田さん。

2022年のプログラムが発表!

2022年度の「こども定期演奏会」のテーマは、「オーケストラ春夏秋冬」。四季折々を感じさせる豊かなオーケストラ音楽を、豪華な指揮者・ソリストたちとともに聴かせてくれます。テーマ曲募集、こども奏者募集、そして新曲チャレンジ・プロジェクトなどのコーナーにも、ぜひご注目を!

取材・文
飯田有抄
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飯田有抄 クラシック音楽ファシリテーター

1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Maqcuqrie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。2008年よりクラシ...

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