新国立劇場バレエ&ダンス2021/2022シーズンは吉田都監督2年目、挑戦的な新制作
2021年3月2日(火)、新国立劇場内にて2021/2022バレエ&ダンス部門のシーズンラインアップ説明会が開催された。舞踊芸術監督の吉田都が来シーズンのプログラムを発表、コンセプトや演出陣らを紹介した。バレエ部門の4つの新制作を含む6演目は以下の通り。
2021年10月~11月 《白鳥の湖》(新制作)
2021年12月~2022年1月 《くるみ割り人形》
2022年1月 ニューイヤー・バレエ
《夏の夜の夢》(新制作)/《テーマとヴァリエーション》
2022年2月 吉田都セレクション
《精確さによる目眩くスリル》(新制作)/《ファイブ・タンゴ》(新制作)/《こうもり》より「グラン・カフェ」
2022年4月~5月 《シンデレラ》
2022年6月 《不思議の国のアリス》
また、ダンス部門のラインナップは以下の通り。
2021年11月 新国立劇場バレエ団 《Dance to the Future: 2021 Selection》
2022年3月 小野寺修二 カンパニーデラシネラ《ふしぎの国のアリス》
2022年6月 森山開次《新版・NINJA》
吉田都にとって2年目となる2021/2022シーズン。就任時に「テクニックだけではなく表現力の向上」と掲げた彼女は、ニューイヤー・バレエや、「吉田都セレクション」の3作品をはじめとした挑戦的な演目を掲げる。
秋の新制作《白鳥の湖》やクリスマスシーズンの《くるみ割り人形》のあと、ニューイヤー・バレエでは、新制作の《夏の夜の夢》と、アブストラクト・バレエ(ストーリー性が少なく、身体性を追求したバレエのこと)の《テーマとバリエーション》を上演。イギリスの巨匠フレデリック・アシュトンによる、シェイクスピアの戯曲を題材にした《夏の夜の夢》は、2011年に吉田が英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団との日本公演で演じた作品。英国にゆかりのある吉田にとって気合いの入る一作になりそうだ。また、《テーマとバリエーション》はジョージ・バランシンの振付で、新国立劇場では2000年の初演以来、再演を重ねる人気作品だ。音楽は、メンデルスゾーンとチャイコフスキー。クーン・ケッセル指揮、東京交響楽団の生演奏で楽しめる。
2月の吉田都セレクションでは、新制作のウィリアム・フォーサイス振付による《精確さによる目眩くスリル》とハンス・フォン・マーネン振付の《ファイブ・タンゴ》、ローラン・プティ振付の《こうもり》より「グラン・カフェ」の3作品が並ぶ。記者からの質問に対し、吉田が「チャレンジ」だと語った《精確さによる目眩くスリル》では、ダンサーたちのテクニックに注目したい。シューベルトの音楽が使用されるこの作品は、クラシックへのオマージュが感じられるプロットレス・バレエ(ストーリーのないバレエ)だ。また、昨シーズンに上演が叶わなかった《ファイブ・タンゴ》では、今年で生誕100年を迎えるアストル・ピアソラの音楽が使用される。
このほかにも、新しい取り組みとして、2月末には「エデュケーショナル・プログラム」と題した舞台芸術の普及に貢献できるようなプログラムや、ダンス公演では、新国立劇場バレエ団から振付家を育てるプロジェクト〈NBJ Choreographic Group〉で生まれた作品を上演する「Dance to the Future」を11月に行なう。また、レパートリー作品でも、年末年始の《くるみ割り人形》が、2020/2021シーズンより回数を増し、12回公演になるなど、意欲的な姿勢が見られる。
ダンサーの「働く環境の整備」もビジョンに掲げる吉田は、練習の効率化だけでなく、怪我人が出たときの対応や、その予防を劇場側がマネジメントしていきたいとも語った。欧米ほど団員数が多くなく、ダブルキャストでの公演が難しいことが背景にあると思われるが、吉田の改革によって、環境が整い、さらに見ごたえのある舞台が見られることに期待したい。
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