ピアノランドフェスティバル25周年!五味太郎との《おんがくえほん こっけん》もお披露目
ピアノ教本《ピアノランド》シリーズの作曲者、樹原涼子さんがピアニストの小原孝さん、作曲家の樹原孝之介さんとともに、ピアノや歌で届けるコンサート「ピアノランド フェスティバル」は、2024年に25周年を迎えました。60回目の記念すべき公演を、飯田有抄さんがレポートします!
1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Maqcuqrie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。2008年よりクラシ...
25周年、60公演目となる記念すべきピアノランド フェスティバル
人気ピアノ教本《ピアノランド》シリーズの楽曲を中心に、作曲者の樹原涼子さんとピアニストの小原孝さんがソロ・連弾・弾き歌いを披露するコンサート「ピアノランド フェスティバル」が、この夏も渋谷区の伝承ホールで開催されました。
フェスティバルは、今年でなんと25周年! 8月1日のコンサートは、これまでの地方公演とあわせると60公演目となる節目の回でもありました。
出版されて33年が経つ《ピアノランド》シリーズは、今もなお子どもたちやピアノの先生たちから絶大な人気を誇る教材です。子どもたちに身近なお菓子やゲームの世界、自然を描いた素敵なピアノ曲、可愛いイラスト、楽しい歌詞の付いた連弾、ミュージックデータ(オーケストラ)の伴奏、無理なく段階的に学べるメソッド——数々の工夫にあふれた先進的な内容は、多くの子どもたちのピアノへの愛を育み、音楽を楽しむ心を培ってきました。
シリーズには何十曲と素敵なレパートリーが並びますが、「フェスティバル」は、最初に「どどどど どーなつ」でスタートするのが恒例です。この曲はまさに《ピアノランド》の原点。ドしか出てこない曲なのに、先生と連弾しながら、おいしいドーナツのことを歌っていたら、両手でピアノを弾けちゃった! 読者の中にも、そんな楽しかった思い出がよぎる方がいるかもしれません。今年も、樹原さんと小原さんの連弾と歌でスタートです。
第1部は「部屋」をテーマに新作の「こっけん」もお披露目
第1部はいろいろな「部屋」で構成されました。まずは「おいしい部屋」。「おいしいきのこさん」、「みかんころころ」、「フルーツケーキワルツ」など、聴いているだけでお腹がすいてきそうなお料理やお菓子の世界。樹原さんと小原さんは、友達どうしのおしゃべりのようなトークで曲と曲をつなぎ、11曲を一気に聴かせました。
曲数の豊富な《ピアノランド》シリーズの中には、ちょっぴり不気味な曲もあるのです。お次は「こわ〜い部屋」のコーナー。ここからは樹原孝之介さんも演奏に加わり、夏らしく怖い曲特集。「こわいはなし」「お化け屋敷」「魔法の館」など、ミュージック・データのオーケストラ伴奏も交えて、ひんやりしたサウンドを楽しみました。
続いては、「こっけんの部屋」。この秋に新刊《おんがくえほん こっけん》が、ピアノランドシリーズに加わります。絵はあの五味太郎さんが描かれているそうです。ニガテ意識を持つ前に、子どもたちが遊びながら黒鍵に慣れ親しめるような曲ばかり12作品が並ぶとのこと。この日は出版に先立ち、できたてホヤホヤの4曲が披露されました。両手を動かす《うねうね、みつけた》や、トーンクラスターを含む《「ド」かくれてます》など、工夫あふれる曲たちです。
第1部の終わりは、フェスティバルの大人気コーナー、ヤンチャな永遠の小学1年生「小原くん」が登場する「爆笑レッスン」です。いつもながらに「練習してこない」小原くんは、新曲《ねこふんじゃダメ!》にチャレンジ! みごと黒鍵と仲良くなれました。
大人も楽しめる第2部では歌やピアノに想いを乗せて
近年の「ピアノランドフェスティバル」は後半に、大人たちも楽しめるコーナーが設けられるようになりました。今年も後半の最初は、小原孝さんによる「弾き語りフォーユー」のコーナー。人気FM番組がリアルに展開していくような贅沢なひと時。小原さんアレンジの「葦笛の踊り」や「小犬のワルツ」(子猫と喧嘩して仲良くなるストーリー!)などが熱演されました。
出演者がステージ上で語らいながら演奏に入る「Liokoの部屋」、今年のテーマは「心ふるえる連弾 今届けたい歌」です。樹原さん、小原さん、孝之介さんがパートを変えながら次々と連弾するスタイルで、「Dreaming」や「明日はいい日だ!」をリレー連弾。そして、樹原さんが2003年にリリースした名曲「どんな日も どんな日も」を、透明感に満ちた歌声で弾き語りした時は、会場の空気を一変させて、しっとりとした集中度を高めました。
圧巻だったのは、孝之介さんが樹原さんと小原さんの二重唱のために作曲した「世界が平和になりますように」。ミュージカルの作曲家として活躍する孝之介さんが、今なお続く戦争に抱く怒りを優しい祈りに変え、思いを歌に託しました。樹原さんと小原さんの歌にはユニゾンが数音しかなく、ほぼ全曲にわたってハモっていきます。純粋な言葉と心打つメロディ、力強く響くピアノは、忘れがたいパフォーマンスとなりました。
その空気を受け継ぎながら、最後に小原さんが聴かせた「ボレロ」のソロ版も、異様な迫力を帯びていました。大人の本気を子どもたちに見せる、聴かせる——そのことの大切さを痛感するステージで、客席の多くの子どもたちは、真剣に聴き入っている様子が伺えました。
アンコールは、新作「ここで」。「うれしいね たのしいね またここで会えたね」という素直な詩に乗せた爽やかな曲で締め括られました。
「ピアノランド」の長年の蓄積、樹原さんと小原さんの厚いミュージシャン・シップ、そして孝之介さんが次世代へ贈る言葉と音楽。今年のフェスティバルも、子どもから大人までみんなが一つになれて、純度の高い胸アツなステージでした。
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