全国共同制作オペラ《愛の妙薬》~杉原邦生が「カワイイ!」をコンセプトにオペラ初演出
全国の劇場、音楽堂や芸術団体が連携し、独創的かつハイレヴェルのオペラを新演出で制作するプロジェクト、全国共同制作オペラ。2025年度はドニゼッティ《愛の妙薬》が11月に東京と大阪、2026年1月に京都で上演される。10月9日に行なわれた記者会見では、演出を担当した杉原邦生のほか出演者6人が登壇し、公演に向けて意気込みを語った。
1941年12月創刊。音楽之友社の看板雑誌「音楽の友」を毎月刊行しています。“音楽の深層を知り、音楽家の本音を聞く”がモットー。今月号のコンテンツはこちらバックナンバ...
「カワイイ!」をテーマにした演出
美しく聡明な娘アディ―ナと、彼女に恋をする純真無垢な青年ネモリーノが偽物の惚れ薬「愛の妙薬」によって結ばれるロマンティック・コメディ《愛の妙薬》。
演出を担当するのは、オペラの演出初挑戦の杉原邦生。2004年にプロデュース公演カンパニー「KUNIO」を立ち上げ、これまでに大作《エンジェルス・イン・アメリカ》や《グリークス》などを上演。2026年1月には演出と舞台美術を手がけた木ノ下歌舞伎《勧進帳》の北米ツアーを控えるなど、いま注目の演出家・舞台美術家である。
今回、杉原が《愛の妙薬》のテーマに掲げたのは、「ハッピーでカワイイ!」というコンセプト。
「『カワイイ』という言葉は、いまや日本のキャラクター文化やアイドル文化によって世界中に知れわたっている、グローバルな言葉です。海外のかたも、『カワイイ』という言葉を知っているようなので、多様性の社会でさまざまなものを肯定し、認めていこうという言葉として、受け入れられている気がします。ネガティヴなものをポジティヴに捉えようとする『カワイイ』をキーワードにこの作品を上演すると、現代のお客さんにもしっかり伝わる作品になるのではないかと考えました」
「カワイイ」を前面にだし、現代に生まれ変わらせた杉山の演出によって、どのような《愛の妙薬》が作り上げられるのか、期待が膨らむ。
気鋭の歌手たちが集結
今回の公演では、数々の舞台で活躍を続けている日本屈指の歌手たちが名を連ねており、会見ではそれぞれの出演者が公演に向けて思いを述べた。
「《愛の妙薬》は、オペラのなかでも珍しいハッピーエンドの物語です。お越しいただいた皆様にくすっと笑顔になっていただき、心が温まるような楽しい時間を過ごしていただけるように、頑張りたいです」
(高野百合絵・アディ―ナ)
「全国共同制作オペラに関わらせていただくのはヴェルディ《椿姫》に次ぐ2回目で、私のいちばん好きな作品で参加させていただけることが本当にうれしいです。自分のコンサートやオーケストラの公演で《愛の妙薬》を取り上げることもありますが、全曲に出演するのは9年ぶりなので、とても楽しみにしています」
(宮里直樹・ネモリーノ)
「いちばん大事にしたいことは、私たちが音楽や言葉、物語をみなさんにきちんと伝えられるようにすることです。《愛の妙薬》は喜劇で、みんなが楽しく終えられるところがよさだと思います。今回は『カワイイ』がテーマなので、かわいさを味わいながら演じていきたいです」
(糸賀修平・ネモリーノ)
「野村萬斎さん演出のJ.シュトラウス2世《こうもり》でファルケ博士を演じたときに、野村さんがテキストから読み取った、ある意味フレッシュな視点からの解釈がとてもヴィヴィッドに感じました。今回のコンセプトはとてもおもしろいもので、それぞれの歌手がもつ音楽や歌のスタイルを戦わせるのではなく、お互いの直感が冴えわたる、よい舞台をつくっていきたいです」
(大西宇宙・ベルコーレ)
「フライヤーのイメージを見たときに、『今年もなにか起こるな』と、心がワクワクしています。ベルコーレ役は今回初めて挑みますが、『カワイイ』のなかに、どのようにはまっていくか、稽古をとおしていろいろなベルコーレを作っていきたいです」
(池田響・ベルコーレ)
「私が演じるジャンネッタという役は、アディーナの友達の村娘という役で、ソリストと合唱をつなぐ役割をもっています。シンプルな内容の歌詞を歌うのですが、見ている皆さんにこの人はどこに心が向いているのだろう、ということを伝えられるように演じたいです」
(秋本悠希・ジャンネッタ)
日時:①11月9日14時②11月16日14時③2026年1月18日14時
会場:①東京芸術劇場 コンサートホール②フェニーチェ堺③ロームシアター京都 メインホール
演出:杉原邦生
出演:セバスティーノ・ロッリ(指揮)、高野百合絵(アディ―ナ)、セルジオ・ヴィターレ(ドゥルカマーラ博士)、秋本悠希(ジャンネッタ)[以上全日]、宮里直樹(ネモリーノ)、大西宇宙(ベルコーレ)[以上①②]、糸賀修平(ネモリーノ)、池内響(ベルコーレ)[以上③]、他
問合せ:東京芸術劇場 03-5391-2111 【東京公演】
フェニーチェ堺 072-223-1000【大阪公演】
ロームシアター京都 075-771-6051【京都公演】
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