2023.10.19
ショパンコンクールの入賞者が決定! 第1ステージからの演奏を総復習
一方で、ケルン音大フォルテピアノ修士課程にてクラヴィコード、チェンバロ、フォルテピアノの古楽奏法を研究し、ドイツを拠点に各地で演奏活動を行なっている坂巻貴彦や、ミュンヘン音大古楽科、ザルツブルク・モーツァルテウム大学のピアノ科・指揮科を卒業し、指揮者、鍵盤楽器奏者として幅広い活動を行なっている大井駿が、それまでの研究をふまえて披露した演奏が認められなかったのは残念だった。
坂巻はあえてブロードウッドを選択して全体の音色に統一感を持たせ、モーツァルト《幻想曲ニ短調》でも作曲家の絶筆の場面から巧みな誘導でクルピンスキのポロネーズにつないでいた。大井は、繰り返しが多く冗長になりがちなショパン《ポロネーズ へ短調》でヴァリアンテを駆使して変化を持たせ、聴き手を飽きさせなかった。
国立音大でショパンのルバートに関する論文で博士号を得ている飯島聡史が演奏するモーツァルト《ロンド イ短調》は、微妙な感情のうつろいを刻々と鍵盤に伝える繊細なタッチで深い感銘を与え、会場内で涙する人も見かけられた。
モダンピアノでは得られない奏法、スタイル、表現を求めて開催されたはずのコンクールで、ある意味理想とも言うべき3名の演奏だったが、彼らの名前は第2次予選進出者のリストになかった。
第2次予選は10日から。柔道のように敗者復活戦はないものだろうか。