ショパン・ピリオド楽器コンクールファイナルレポート~エリック・グオが優勝!
第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクールのファイナルが10月13日~14日に開催。全員がショパンのピアノ協奏曲第1番を選択し、カナダのエリック・グオが1位に輝きました。ファイナルにおける、6名全員の演奏をレポートします。
安川加壽子、ピエール・バルビゼの各氏に師事。フランス国立マルセイユ音楽院首席卒業、東京藝術大学大学院博士課程修了。武満徹・矢代秋雄・八村義夫作品を集めた『残酷なやさし...
本選は10月13日、14日とフィルハーモニー・大ホールで開催された。
ヴァーツラフ・ルクス指揮{Oh!}オルキェストラとの共演は、たまたまファイナリスト全員が第1番の協奏曲を選択していた。
楽器も、1842年製プレイエルと38年製エラールがちょうど3名ずつときれいに分かれた。
エリック・グオ~プレイエルで緩急自在なテンポ
優勝したエリック・グオは2002年生まれの21歳。すでに2021年のショパン・コンクールで本大会に出場している実力者。ピリオド楽器の学習歴はなく、8月に開かれたマスタークラスで初めて体験し、ワルシャワ入りしてから練習する機会があった程度だという。
しかし、第1次予選のバッハではグラーフのペダルを巧みに使い、楽器の特性を活かして立体的に描き出していた。クルピンスキのポロネーズでは、多彩なヴァリアンテを駆使してその場で即興しているような雰囲気をつくり、モーツァルトの《幻想曲 ニ短調》でも適切な場面でアインガングを挿入していた。
協奏曲第1番はプレイエルを選択。第1楽章は緩急自在なイントロで開始し、ニュアンス豊かな第1主題で聴かせる。プレイエルなので、個々の音よりは全体の流れを重視し、ナラティブな効果をあげていた。ホルンと共に歌う第2主題も表情の変化をつけ、オクターヴで情熱的に歌い込む。コーダは左手でアクセントをつけ、右手の高音を強調して弾き進むが、エラールではないので、音の粒がはっきりしないうらみがある。この傾向は最後まで続いた。第2楽章では、テーマが装飾される部分でアルペッジョの後に短いヴァリアンテを入れたのが印象的だった。
第3楽章も緩急自在なテンポと見事な指さばきで弾き進むが、華麗なパッセージの最後を力を込めて弾き切り、腕を高く上げるシーンも続出し、ややハラハラした。
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