ショパン・ピリオド楽器コンクール第2次予選レポート~古楽器の多彩なニュアンスが競合
第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクールの第2次予選が10月10日~11日の2日間にわたり開催されました。第2次予選の課題曲はマズルカ、ワルツ、ソナタとショパンの作品のみ。15名の演奏の中から、とくに注目された演奏をピックアップしてお届けします。
安川加壽子、ピエール・バルビゼの各氏に師事。フランス国立マルセイユ音楽院首席卒業、東京藝術大学大学院博士課程修了。武満徹・矢代秋雄・八村義夫作品を集めた『残酷なやさし...
第2次予選は10月10日と11日の2日間、フィルハーモニーの室内楽ホールで行なわれた。
第1次予選と違っているのは、プログラムがショパンに限定されること。ウィーン式アクションの楽器(グラーフとブッフホルツ)の使用が義務づけられていないこと。
第1次予選のようにバッハ、モーツァルト、ショパンの初期作品がなかったため、古楽器特有の技法を使う機会もめっきり減った。
ファイナル進出者の中で、モダンとフォルテのダブルキャリアを積んでいるのは、アメリカのアンジー・チャンとオーストリアのマルティン・ヌーバウアー。
アンジー・チャン~遊び心満載のワルツ作品42
アンジー・チャン Angie Zhang は第2次予選出場者でただ一人、グラーフを選択した。マズルカ作品17の第1番は陰影に富み、リズムがよくはずむ。第3番の回想シーンでは、モデレートペダルを使って囁くような効果を出していた。
1842年製プレイエルで弾かれた「ソナタ第3番」。第2楽章は音の連なりが美しく、第3楽章は夢のよう。仄暗い出だしの第4楽章も素晴らしかったが、クライマックスになるとどうしても楽器に負担がかかる。再びグラーフに戻り、ワルツ作品42は遊び心満載の楽しい演奏だった。
マルティン・ヌーバウアー~楽器の扱いや特有の表現が卓越
マルティン・ヌーバウアー Martin Nöbauer は1838年製エラールでマズルカ作品50を演奏。第1番では、哀愁に満ちた左手のメロディが呟きのよう。第3番では、密やかな出だしとポエティックに応える左手で空気がふわっと持ち上がる。半音階で迫る慟哭シーンでは左手を強調して爆発を防ぐ。そのままアインガングで繋ぎ、ワルツ作品34-1へ。ペダルをたっぷり使い、多彩なニュアンスで魅力的だった。
「ソナタ第3番」はプレイエル。第1楽章のマエストーゾを、音量ではなくテンポの変化で表現するのはさすが。カンティレーナも左手と右手をずらし、澄んだ響きで美しかった。
全体にフォルテを出す時は瞬間的に力を上に逃し、楽器に負担をかけないように配慮する。重くなりがちな第4楽章も、緩急の変化をつけてまとめていた。
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