ベートーヴェン《合唱幻想曲》で煌めく指さばきを最大限に発揮したブルース・リウ

ブルース・リウは、ベートーヴェン《合唱幻想曲》という珍しい作品をポドラシェ歌劇場フィルハーモニー合唱団と協演。ショパン・コンクールのオープニングなのにショパンが1曲もない、という不思議な展開となった。

オケも合唱も置いて、いきなりピアノがハ短調のアッコードを弾き始める。《運命交響曲》の頃の作品で、ブルースらしい中身の詰まった和音を鳴らし、1858年製エラールから、この夜もっともベートーヴェンらしい重厚なサウンドを引き出していた。

華麗なアルペッジョの後でようやくオケが入って来て、ピアノと対話を交わす。こちらは「交響曲第9番」の《歓喜の歌》の萌芽とのこと。2021年のコンクールでも際立ったブルースの煌めく指さばきが最大限に発揮された。

第18回ショパン国際ピアノコンクールの覇者ブルース・リウは、ベートーヴェン《合唱幻想曲》という珍しい作品を選んだ

熱狂的なスタンディングオベーションの中、カーテンコールに協奏曲のソリスト3人が登場し、ラフマニノフの6手のための「3つの小品」から《ロマンス》を奏でた。上がブルース、真ん中がアルゲリッチで下がリッテル。同じピアノを弾いているのに3人の音色がまったく違うのが印象的だった。

カーテンコールでブルース・リウとアルゲリッチ、リッテルが6手連弾!三者三様の音色が印象的だった

こんな素晴らしいオープニング・コンサートに祝福されたショパン国際ピリオド楽器コンクール。未来のリッテル、川口を目指して35名のピアニストがしのぎを削る。レポートも乞うご期待!

青柳いづみこ
青柳いづみこ ピアニスト・文筆家

安川加壽子、ピエール・バルビゼの各氏に師事。フランス国立マルセイユ音楽院首席卒業、東京藝術大学大学院博士課程修了。武満徹・矢代秋雄・八村義夫作品を集めた『残酷なやさし...