2023.06.05
シューベルト「ピアノ・ソナタ第21番」~強い表出力に心のリミッターを外される恐怖
ついでにもう一つ、ハイドンの危なそうな音楽を紹介しておこう。
交響曲第80番の終楽章だ。#ファー#ファー#ファー、ミーミーミーで始まる冒頭の主題が、いつも心にひっかかる。恐ろしくシンプルなのだけれど、どこか小馬鹿にされているような、何か不吉なことがこれから起こるような。ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第11番が映し出す皮相な世界とも似ていなくもない。
ハイドン:交響曲第80番 終楽章
何気なく通りをぶらぶらと歩いていて、アタマのなかでこの主題がふと鳴ったりする。まるで、太宰治の「トカトントン」のように、目の前のものがすべて虚脱し、ぐったりと萎れかかる。これゃあ、危ないわね。前を向いて歩こう。