交響曲第80番にも不吉な予感が

ついでにもう一つ、ハイドンの危なそうな音楽を紹介しておこう。

交響曲第80番終楽章だ。#ファー#ファー#ファー、ミーミーミーで始まる冒頭の主題が、いつも心にひっかかる。恐ろしくシンプルなのだけれど、どこか小馬鹿にされているような、何か不吉なことがこれから起こるような。ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第11番が映し出す皮相な世界とも似ていなくもない。

ハイドン:交響曲第80番 終楽章

何気なく通りをぶらぶらと歩いていて、アタマのなかでこの主題がふと鳴ったりする。まるで、太宰治の「トカトントン」のように、目の前のものがすべて虚脱し、ぐったりと萎れかかる。これゃあ、危ないわね。前を向いて歩こう。

鈴木淳史
鈴木淳史

1970年山形県寒河江市生まれ。もともと体育と音楽が大嫌いなガキだったが、11歳のとき初めて買ったレコード(YMOの「テクノデリック」)に妙なハマり方をして以来、音楽...