2023.07.26
ソロからアンサンブルまでフィールドを広げる オーケストラの人気プレイヤー7人
全18曲を通じて示される藤田の演奏の大きな魅力として、精密なダイナミックレンジ(音量の幅)、そして俊敏なタッチから生まれる美しい音質と巧妙なペダリング、極端でないテンポ設定など。これだけでも誰も真似をできないことと思うが、加えてリピートの際の鮮やかな即興がある。彼のトレードマークであるが、けっして思いつきで弾いているのでなく、裏付けがあってのことだという。
去る9月29日、ピアニスト本人も登壇しての記者会見が開かれた。アルバム発表で対面会見が実施されるのも珍しいことだ。この席で、藤田真央は「ソニーの素晴らしいスタッフの仕事ぶりに感謝している。美しい録音を自分で聴いて感動した」と述べ、11日間でのスケジュールでは「演奏の難しい曲を最初に録音した」と語った。また即興に関しては「モーツァルトが敬愛していたカール・フィリップ・エマヌエル・バッハの時代では普通に行なっていた」と述べた。
来年も1月にニューヨークのカーネギー・ホールでのデビュー、7月にはロンドンの名門ウィグモア・ホールでモーツァルトのピアノ・ソナタ全曲演奏会、また海外オーケストラとの共演が予定されている。このソナタ全集を聴きながら、藤田真央の新たなる展開を見守りたい。