世界規模の活躍を見守りたい

全18曲を通じて示される藤田の演奏の大きな魅力として、精密なダイナミックレンジ(音量の幅)、そして俊敏なタッチから生まれる美しい音質と巧妙なペダリング、極端でないテンポ設定など。これだけでも誰も真似をできないことと思うが、加えてリピートの際の鮮やかな即興がある。彼のトレードマークであるが、けっして思いつきで弾いているのでなく、裏付けがあってのことだという。

去る9月29日、ピアニスト本人も登壇しての記者会見が開かれた。アルバム発表で対面会見が実施されるのも珍しいことだ。この席で、藤田真央は「ソニーの素晴らしいスタッフの仕事ぶりに感謝している。美しい録音を自分で聴いて感動した」と述べ、11日間でのスケジュールでは「演奏の難しい曲を最初に録音した」と語った。また即興に関しては「モーツァルトが敬愛していたカール・フィリップ・エマヌエル・バッハの時代では普通に行なっていた」と述べた。

来年も1月にニューヨークのカーネギー・ホールでのデビュー、7月にはロンドンの名門ウィグモア・ホールでモーツァルトのピアノ・ソナタ全曲演奏会、また海外オーケストラとの共演が予定されている。このソナタ全集を聴きながら、藤田真央の新たなる展開を見守りたい。

商品情報
「モーツァルト:ピアノ・ソナタ全集」

藤田真央(ピアノ)

国内盤:完全生産限定盤(CD×5枚・特典 BD1枚・特典フルカラーフォトブック  三方背ボックス仕様)[Sony Classical SICC-30603~30608]

配信 

城間 勉
城間 勉

1958年東京生まれ。子どものころからピアノを習ってはいたが、本当にクラシック音楽に目覚めたのは中学生時代にモーツァルトの魅力に触れてから。バレンボイム&イギリス室内...