「第九」第4楽章でベートーヴェンが伝えたかったメッセージ

稲垣 「第九」は鮮度が失われないというか……何回も聴いているはずなのに、すごいなと思います。飽きないです。魅力や、新鮮度、そして受ける衝撃みたいなものが変わらないんですよね。

平野 ベートーヴェンにとって「第九」の4楽章は、メッセージ性ですね。 シラーの詩は108行あるんだけど、ベートーヴェンは36行しか使っていなくて、順番も入れ替えています。だからシラーの詩全体のメッセージと、ベートーヴェンが「第九」で使っているメッセージ性は違う。

稲垣 へー!

平野 シラーの詩全体は、お酒の席で歌われるトリンクリート(ドイツ語で「酒飲みの歌」の意)で、40人ぐらいの作曲家が同じ詩で曲を作ってるんです。

稲垣 あの時代だけで! ということは、ウィーンの人たちは聞いたことがある言葉でもあったんですか? とくに盛り上がるところをピックアップしているから。

平野 そうです、言葉としてはみんな知っている言葉だった。ベートーヴェンは入れ替えて、一部しか使ってない。そうすると余計、聴いている人には「すべての人々は兄弟となる」というのが強調されているので、ベートーヴェンのメッセージになったわけです。世界平和ですね。

逆にいうと、1824年当時のウィーンっていうのは、まだ社会情勢的に安定していない。そういう中で願っていたわけです。

稲垣 本当に時代に翻弄されていましたね。今思うと、何も変わってないのかなと悲しくなりますよね。むしろ、ひどくなっているかもしれないですけどね。ベートーヴェンはどうやって今の時勢を見つめているんでしょうかね。天国から。

公演情報
舞台『No.9 -不滅の旋律-』

【東京公演】
日時: 2024年12月21日(土)~31日(火)
会場: 東京国際フォーラム ホールC

【福岡公演】
日時: 2025年1月11日(土)~12日(日)
会場: 久留米シティプラザ

【大阪公演】
日時: 2025年1月18日(土)~20日(月)
会場: オリックス劇場

【浜松公演】
日時: 2025年2月1日(土)~2日(日)
会場: アクトシティ浜松大ホール

出演: 稲垣吾郎/剛力彩芽/片桐仁、南沢奈央、崎山つばさ、中尾暢樹/岡田義徳、深水元基、松田佳央理、小川ゲン、 宮部大駿、正垣湊都・村山董絃(Wキャスト)/奥貫薫、羽場裕一、長谷川初範

演出: 白井晃

ピアニスト: 末永匡、梅田智也

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対談した人
平野昭
対談した人
平野昭 音楽学者

1949年、横浜生まれ。武蔵野音楽大学大学院音楽学専攻終了。元慶應義塾大学文学部教授、静岡文化芸術大学名誉教授、沖縄県立芸術大学客員教授、桐朋学園大学特任教授。古典派...

まとめ
ONTOMO編集部
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ONTOMO編集部

東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...