バッハ「トッカータとフーガ」のBGM使用は東京裁判から

戦後の選曲もなかなか奮っている。東京裁判を報じる映像では、必ずといっていいほどにバッハの「トッカータとフーガ」の管弦楽版が流れる。後世における、この曲の使われ方を決定した選曲といっていいのではないか。

▼J.S.バッハ:トッカータとフーガ

東京裁判。公判中の法廷内

いわゆる帝銀事件。ここで響くワーグナーの《ジークフリートの葬送行進曲》も、戦時中から日本ニュースでは頻繁に使用された曲だ。ちなみに、この事件の容疑者逮捕を報じたときの音楽は、ストラヴィンスキーの《火の鳥》から「カスチェイ王の魔の踊り」

▼ワーグナー:《ジークフリートの葬送行進曲》

ストラヴィンスキーの《兵士の物語》から「王の行進曲」の音楽とともに、教祖の北村サヨが登場。なんとも意地悪、かつ秀逸な選曲にうならされる。

ストラヴィンスキー:《兵士の物語》~「王の行進曲」

ちなみに、わたしが、初めて「日本ニュース」を見たのは9歳のときだった。NHKでそれを特集した番組を、家族で旅行した離島のテレビで食い入るように見た。もしかしたら、ブルックナーやマーラーの音楽に最初に触れたのはこのときかもしれない。それが衝撃を与えたのかはわからないものの、その夜にかなり久しぶりにおねしょをしてしまい、翌朝にすさまじく恥ずかしい思いをした(それが、今のところ、人生最後のお漏らしとなった)。

鈴木淳史
鈴木淳史

1970年山形県寒河江市生まれ。もともと体育と音楽が大嫌いなガキだったが、11歳のとき初めて買ったレコード(YMOの「テクノデリック」)に妙なハマり方をして以来、音楽...