2024.11.07
時代の音が混入!?ランドフスカ、フルトヴェングラー、シューリヒトの「歴史的」録音...
一方、アルテュール・ラバンディエによる室内合奏版は型破りながら、この曲のツボをちゃんと押さえている。鬼才マクシム・パスカルがアンサンブル・ル・バルコンを指揮して演奏している。こちらは、ドラムやエレキ・ギターなども入った、かなり自由なアレンジ。
冒頭楽章の序奏は独奏ヴァイオリンが、無伴奏曲を弾くように始まる。まったく知らない曲だなと思って聴いていると、それがいつのまにか《幻想交響曲》に変わっていく。コラージュの手法を取り入れた編曲なのだ。
第2楽章のワルツには、突然ビッグバンド・ジャズが乱入してきたり、ミヨーの南仏的なパスティーシュ(作風の模倣)も入る。エレキ・ギターの響きがもたらすメランコリックさが、原曲の味わいをより濃厚に醸し出す。同様に、第3楽章はワーグナーにも、メタルにも変化する。気がつくと原曲に戻っている感じもいい。
終楽章はチープな電子音も入り、ゲーム音楽風に。途中で軍楽隊になり、ベートーヴェンの《第九》を奏でる。これらはこの交響曲のルーツを正確に「引用」している。《幻想交響曲》はフランス革命で流行った軍楽隊と、ベートーヴェンが拡張した交響曲の延長線上にあるのだから。まあ、ドサクサに紛れて《星に願いを》の旋律も奏でられていたりするのだけれども。
読み替え風コラージュで、妙にポップさも伴った《幻想》。楽章ごとのキャラはさらに濃くなり、摩耗しきっていた我が感性もぐいぐい刺激された。長生きできそうな気もしてきた。