2024.11.07
時代の音が混入!?ランドフスカ、フルトヴェングラー、シューリヒトの「歴史的」録音...
小澤征爾とボストン交響楽団によるフィリップス・レーベルとの最初のアルバムが、いかにも小澤という存在を象徴するかのようで興味深い(残念ながら、ストリーミング配信では聴けないようだ)。
呉祖強の琵琶協奏曲《草原の小姉妹》に、スーザの《星条旗よ永遠なれ》とリストの「ピアノ協奏曲第1番」を組み合わせた、謎めいた選曲である。というのも、リストの協奏曲のソリストは劉詩昆。1958年の第1回チャイコフスキー国際コンクールで第2位に輝いたピアニストだ。中国とアメリカとを結びつける、要するにボストン響の中国公演のための選曲なのだ。
中国生まれの日本人指揮者がアメリカのオーケストラを指揮して、中国の作品ならびにピアニストを折り込んだプログラムを中国で披露する。この多様性、アジアと欧米を結びつけるという使命感、テーマはあれど脈絡のない音楽性。これらがもたらす、不思議なスケール感。こういうところにも小澤征爾の魅力は隠れている(呉祖強による社会主義リアリズム的な作品を、小澤はなんと真摯に奏でているのであろうか!)。