指揮者になると決めた高校2年の夏

日本で高校2年生まで終わらせたから本当はあと1年でいいところ、せっかく留学するのに1年じゃもったいないと思って、インターロッケンには2年生から入れてもらいました。実際に行ってみたら……。それはもう焦ったね〜。周囲が天才少年少女ばかり。人生初の「ヤバいじゃん」と思った時だと思う。そして「2年生に編入してもらって良かった」と心から思いました。「24か月あったら、追いつき追い越し、なんとかなるだろう」と。

それからは必死で練習しました。サックスもフルートやクラリネットなど他の吹奏楽器も練習、練習、練習。練習に疲れると楽典とかの勉強。朝から晩まで、とにかく音楽だけに浸って毎日を過ごしました。

インターロッケンはある意味シビアで、「できるのならやりなさい、応援しますよ。できないのならやめなさい、今のうちに」という校風です。実際それぞれの楽器でランキングが出されるのですが、留学当初、僕のサックスはビリでした。2年後、卒業する時は1番上にいましたから、努力の甲斐があったし、それは自信にもなりました。

フレデリック・フェネル先生に出会ったのは留学した翌年、2003年にフェネルの指揮で吹奏楽を演奏したのがきっかけです。彼は2004年に亡くなっているので、当時はもうおじいちゃんでした。でも、とにかく驚いた。カッコよかった。僕は自分が音楽大好きだと思っていたけれど、こんなに音楽が好きな人を初めて見たと思いました。音楽が大好きなだけじゃなく、音楽に愛されている人。指揮をするときはもちろん、音楽の話をする時、普通に歩いている時、彼のオーラが音楽だった。音楽のミューズ(女神)に抱かれていた人です。

それで初めてのリハーサルの時に、すぐ追いかけていって、「先生、指揮者になりたいです」って言ったの。彼は「指揮の基礎とかは教えられないけど、スコアを見て作曲家が何を考えていたのか、作曲家の魂を喜ばせること、どういうふうに表現したらいいのかということは教えられるよ」と言ってくれた。今振り返ると、じーんと来るけれど、でも当時の僕は意味がわからなかった。

それでも、僕はフェネルから指揮の基礎を学び、子どもの頃、点字や手話に熱中したように、指揮棒で伝えるコミュニケーションに、みるみる魅了されていきました。そして、その夏、彼が振る野外コンサートのアンコールで僕は人生初の指揮をしたのです。ハワード・ハンソンのインターロッケンのテーマ。1分20秒ぐらいの短い曲です。

とりあえず鳥肌がすごかった。宙に浮いていた感じ。自分が振っているのを宙に浮いている自分が見ている、そんな感じです。終わって、ぶわーって拍手喝采になって、その興奮の中で、はっきりと自覚しました。「僕はこれをやるために生まれてきたんだ」と。

公演情報
大阪フィルハーモニー交響楽団 マチネ・シンフォニーVol.28

日時:2022年11月7日(月)14:00開演

会場:ザ・シンフォニーホール

曲目:グリンカ/歌劇《ルスランとリュドミラ》序曲

チャイコフスキー/幻想序曲《ロメオとジュリエット》、バレエ組曲《眠りの森の美女》

ストラヴィンスキー/バレエ組曲《火の鳥》(1919年版)

料金:A席5,100円、B席3,100円

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二期会創立70周年記念公演「天国と地獄」

日時:2022年11月23日(水・祝)17:00開演、11月24日(木)14:00開演、11月26日(土)14:00開演、11月27日(日)14:00開演

会場:日生劇場

共演:演出:鵜山 仁、東京フィルハーモニー交響楽団 ほか

料金:S席13,500円、A席11,000円、B席8,000円、学生2,000円

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フレッシュ名曲コンサート 原田慶太楼と若き俊英たちが贈る初冬の華やぎ

日時:2022年12月10日(土)14:00開演

会場:葛飾シンフォニーヒルズ モーツァルトホール

曲目:モーツァルト/歌劇《フィガロの結婚》序曲

メンデルスゾーン/交響曲第4番イ長調《イタリア》

モーツァルト/協奏交響曲変ホ長調K.297b

共演:荒木奏美(オーボエ)、コハーン・イシュトヴァーン(クラリネット)、保崎 佑(ファゴット)、栁谷 信(ホルン)、東京交響楽団

料金:S席3,500円、A席2,500円、Z席2,000円

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原田慶太楼
原田慶太楼 指揮者

アメリカ、ヨーロッパ、アジアを中心に目覚しい活躍を続けている期待の俊英。2021年4月東京交響楽団正指揮者に就任。シンシナティ交響楽団およびシンシナティ・ポップス・オ...

能勢邦子
能勢邦子 コンテンツディレクター

『anan』元編集長。『Hanako』『POPEYE』元副編集長。2018年まで約30年間、マガジンハウスで雑誌や書籍の編集に携わり、話題作を次々に生み出す。担当した...