読みもの
2022.09.13

原田慶太楼の「Knock on the Door」~第1回 ドアをノックして自分の未来を開けていく

いま、その動向からもっとも目が離せない指揮者・原田慶太楼。彼の信条である「Knock on the Door」をテーマに、様々なステージにチャレンジする彼の姿を追っていきます。

能勢邦子
能勢邦子 コンテンツディレクター

『anan』元編集長。『Hanako』『POPEYE』元副編集長。2018年まで約30年間、マガジンハウスで雑誌や書籍の編集に携わり、話題作を次々に生み出す。担当した...

撮影:岩本慶三

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原田 慶太楼(はらだ・けいたろう):1985年、東京都生まれ。インターロッケン芸術高校音楽科で指揮をF.フェネルに師事。指揮法をロシアのサンクトペテルブルクで学び、2006年モスクワ交響楽団を指揮してデビュー。シンシナティ交響楽団およびシンシナティ・ポップス・オーケストラ、アリゾナ・オペラ、リッチモンド交響楽団のアソシエイト・コンダクターを経て、2020年シーズンからアメリカジョージア州サヴァンナ・フィルハーモニックの音楽&芸術監督。2021年、東京交響楽団正指揮者に就任した。第29回(2021年度)渡邉曉雄音楽基金音楽賞受賞。第20回齋藤秀雄メモリアル基金賞受賞。

はじめまして、慶太楼です。

この連載を通して、みなさんに強く伝えたいことがあります。

「なりたい人間になりなさい」

そして、それをコントロールできるのは自分しかいないということ。自分が自分の将来のすべてをコントロールできる、自分の将来をコントロールするのは他の人じゃないということを、まず最初に知ってもらいたい。

じゃあ、何になりたいのか、何になりたくないのか、それを最初に確認しないといけませんよね。

自分はこうなりたいというのを、僕は19歳の時からずっと紙に書き出しています。それはもちろん歳をとるとともに変わってきます。変わってくるものです。

でも、その時その時、紙に書くというのが大切で、僕は書いた紙を洗面台の鏡に貼っています。歯を磨きながら、それを見て「僕はこういう人生を歩みたい」「こういうキャリアはしたくない」と考えていると、何かひらめいたりします。アイデアが浮かんだら、また紙に書いて貼り直したり、毎日そんなことを繰り返しています。

やってみるとわかるのですが、「こうなりたくない」というのは比較的簡単に思いつくものです。じゃあ、いざ、何になりたいか考えてみると、意外と出てこない。好きなこと、得意なこと、1年後何をしていたいか、どこに住んでいたいか、収入は? 結婚は? と少しずつ、なりたい自分をイメージしていくといいと思います。

なりたい自分がイメージできたら、それになるためのstep by step(一歩一歩)、具体的な計画もノートに書き出します。なりたい自分から逆算して、これを得るには今年何をしなきゃいけないのか、来年何をしなきゃいけないのか、to do(やること)リストをつくって、チェックしていきます。

僕はノートと筆記具にもこだわりがあって、いつも持ち歩いています。ノートは、最近、伊東屋で〈LEUCHTTURM1917〉(ロイヒトトゥルム1917)というドイツのブランドを見つけて、かなり気に入っています。

筆記具は消せないものがいい。鉛筆で書いて消しゴムで消してしまうのではなく、ペンで書いて二重線で消します。書いた時の気持ちを後から見返すことができるからです。

だからこれだけはパソコンでもなく、スーパーアナログ。言霊というか、紙に書くことで、書いた言葉に刺激されることもありますからね。書きながら考えが整理されていくんです。

計画がうまく行かないこともある

例えば僕は日本で指揮者として振り始めて8年目なんですけれど、日本のトップクラスのオーケストラといえばNHK交響楽団ですよね? 僕はいったい何をすればN響を振れるようになれるんだろうか、というのを日本で活動する前から計画してきました。

今、N響とはCDが3枚も出て、幸運なことに定期演奏会も振らせていただきました。でもこれは、自分のなかではこれまで計画してきたとおりに進められている状況なんです。今、37歳になりましたが、33歳までにはN響にアプローチして、36歳ではこれをしてって、かなり細かく計画を書き上げていました。

もちろん、計画がうまく行かないこともたくさんありますよ。そしたら、ちょっとadjust(調整)すればいい。今年はできなかったけど来年こうしたらできるだろうとか、こういう人たちに会えばこうなるだろうとか、軌道修正しながら進めていく。

計画というのは達成後はもちろん、中間地点で見返すことがおもしろいんです。「先月はこれだけ頑張ったな」とか「3年前に比べたら今すごいな」とか。これが、紙に書いて、うまく行かないことも消さずにとっておく理由です。

ゴールはもちろん大切です。でもゴールだけを見て念じていても、どこにも行けない。毎日のstep by step、そのプロセスから学ぶことがたくさんあります。

Learn from journey(旅から学べ)って、僕よく言っています。コンクールに優勝することがゴールだとしたら、今日はスケールをよく練習する、このテクニックをマスターする、そういうstep by stepを、ひとつずつ達成していくこと自体が喜びなんです。

フルマラソンだって、いきなり走る人はいないですよね。毎日コツコツ体づくりをして、10キロマラソンから始め、走り方を調整して、ハーフマラソンに出る。

ゴールを定め、計画を立て、step by stepを達成しながら、計画を見返し、うまく行かないところは調整し、前に進む。

このKeep planning(計画を立て続けること)は、なりたい人間になるために必須です。とにかく、planning、planning、planning。

勇気を持って一歩を踏み出そう!

Keep planningのベースができていれば、あとは行動するのみです。紙に書いた計画どおりに行動に移すこともありますし、インスピレーションで「あ!」と思ったら即行動することもあります。Keep planningをしていないと、インスピレーションも湧かないんですよ。

そして行動しないと、Keep planningができないんですよ。現状維持で、今いるところに、いつづけることは、とても楽で快適です。でも、その快適にいちゃいけない。快適から一歩踏み出すことで、その一歩の勇気で何かが始まるし、世界が広がっていく。

僕の人生のモットーは「Knock on the Door(ドアをノックする)」。アメリカに留学した時、指揮者になろうと決めた時、ロシアに渡った時……、今までに何千回、何万回、ドアをノックしてきました。

ノックしないことには、ドアは開きません。オーディション、コンクール、奨学金……、ノックして「No」と言われたことも数えきれません。でも何百回「No」と言われても諦めない。「当たって砕けろ」の精神です。

僕だって、「No」と言われれば、それは悔しいし落ち込みます。でも、とっておきの「諦めの術」を伝授しましょう。それは、30秒とか1分とか時間を区切って、その時間だけ思いっきり、くよくよすること。タイマーをかけて1分経ったら、「もういいや」って考えるのをやめる。もう変えられないし、決まっちゃったことだから、やーめた! って。

不合格の手紙が来たとき、それを燃やしたら、すっごく気持ちがよかったのね。燃えているのを見たら、悔しい気持ちも燃えていって、それでスッキリして、見返してやる! って思った。

O.K.」「Thank you」「Good bye」、僕この3つの言葉が大好きなんだけど、「No」と言われたら、「はいはい、さようなら」みたいな感じ。この3つの言葉があれば、屈辱の嵐も乗り越えられる。

でも、これがまた大切なことなんだけど、「No」と言われた屈辱があるからこそ、成功の喜びも大きくなる。いつもずっと成功している人なんかいないんですよ。落ちないと上がれない。落ちたことで次は成功するぞというエネルギーが湧き、成功するための工夫が生まれるの。それがわかると、失敗も「よしっ、チャンス」と思えるようになります。

みなさんも「No」を恐れず、どんどん「Knock on the Door」を実践してください。ドアが開くたび、夢に近づいていきますから。

公演情報
東京交響楽団名曲全集第179回〈前期〉

日時:2022年9月25日(日)14:00開演

会場:ミューザ川崎シンフォニーホール

曲目:吉松隆:チカプop.14a、チェロ協奏曲「ケンタウルス・ユニット」op.91、交響曲第1番「カムイチカプ」op.40

共演:宮田大(チェロ)

料金:S席6,000円、A席5,000円、B席4,000円、C席3,000円

詳しくはこちら

 

山形交響楽団第304回定期演奏会

日時:2022年10月22日(土)19:00開演、10月23日(日)15:00開演

会場:山形テルサホール

曲目:小田実結子:山響創立50周年記念委嘱作品(世界初演)

ドヴォルザーク:ピアノ協奏曲ト短調作品33、交響曲第9番ホ短調「新世界より」作品95

共演:阪田知樹(ピアノ)

料金:A席4,800円、B席4,300円

詳しくはこちら

 

二期会創立70周年記念公演「天国と地獄」

日時:2022年11月23日(水・祝)17:00開演、11月24日(木)14:00開演、11月26日(土)14:00開演、11月27日(日)14:00開演

会場:日生劇場

共演:演出:鵜山 仁、東京フィルハーモニー交響楽団 ほか

料金:S席13,500円、A席11,000円、B席8,000円、学生2,000円

詳しくはこちら

 

能勢邦子
能勢邦子 コンテンツディレクター

『anan』元編集長。『Hanako』『POPEYE』元副編集長。2018年まで約30年間、マガジンハウスで雑誌や書籍の編集に携わり、話題作を次々に生み出す。担当した...

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