——京響の特徴を教えてください。
中山 初めてエキストラで呼んでいただいたときにまず最初に思ったことですけど、ティンパニの音をよく聴いてくれるなと思います。いろいろなオーケストラとエキストラで共演すると、その楽団のカラーが見えるんですよね。前任のティンパニ奏者がどういう方だったかというのも、けっこう如実に出るんです。
あとは音色ですね。日本ではけっこうスパッと音が出るオーケストラが多いと思うんですけど、京響の音色については沖澤さんが「舞っていた音が立ち上るようだ」と表現されていて、僕もたしかにと思いました。上に抜けていくような音、というんですかね。
——雰囲気はどうですか?
中山 「関西のオケってこういう感じなんだ」って最初に来たときに感じました。皆さんすごく仲が良くて、音楽の話だけじゃなくて、人生の相談とか何でも話せるような人が周りに揃ってて、それはすごくやりやすいです。ただ、単なる仲良し集団じゃない。ちゃんとプロフェッショナルという面があって、そこはバランスがいいんじゃないかと思います。
——オーケストラの中でのティンパニの役割とは?
中山 難しいですね……時代によって役割は変わってきていると思います。作曲家も変わり、楽器も進化してきていますし。古典派よりももっと昔、馬にティンパニをつけて乗っている人が叩いていた時代には、行進の足並みをそろえる信号としての役割がありました。それがそのままオーケストラに反映されているときもあります。あと、締まりますね。オーケストラでも行進で使われていたときも、みんなの気持ちも引き締まるし、演奏も引き締まる。
時代が現代に近づくにつれてオーケストラが大きくなり、ティンパニもより大きな音を出るように、マレットの種類や数もすごく増えてきました。そこから、雷の音や不気味さを出すための弱いトレモロなど、昔には出せなかった音色感が出せるようになった。そういう雰囲気作りの面も大きくなってきたと思います。
あとは和声ですね。もともと2台のティンパニでドミナント*、トニック**を取っていたのが、より「引き締める」役割として機能してるんじゃないかと。皆がワーッとやってる中でティンパニでビシッと決める。それもティンパニの醍醐味ですね。
*ドミナント:属音。主音の完全5度上の音。主音についで重要な音で、主音とともに調を支配する。
**トニック:主音。音階の第1音。音階の基礎となる音。調はこの音名でよばれ、楽曲はこの音で終わることが多い。