オーケストラで学ぶこと

——中学では吹奏楽部、高校では管弦楽部に所属していた田代さんですが、現在、ミュージカル俳優として活動されていて、そうした経験が活かされていると感じる場面はありますか。

田代 やはり、アンサンブル能力、コミュニケーション能力を学んだと思います。オーケストラでは僕はこの楽器で、この音色で、このスコアの中でここを担当するっていう役割がありますよね。役者も一緒で、ミュージカルの中でこの役をやるというのは、作品そのものではなく、作品のパーツの一つになるという意味なので、そこはオーケストラをやっていたことがすごく役に立っていると思います。

児玉 おっしゃる通り、オーケストラでは周囲の奏者、特に下のパートを吹く場合には上のパートをサポートする能力が求められますよね。さらに時にはアンサンブル全体を引っ張っていくリーダーシップも必要となる。僕は将来的にはソリストに戻ってきたいんですが、そのときにもオーケストラの経験があるとないとでは全然違うと思います。

田代 オーケストラの作品では具体的に演奏したい曲はあるの?

児玉 僕は今、マーラーを吹きたいです。

田代 マーラー! 僕はまさに、16歳のときに高校の管弦楽部で、マーラーの交響曲第1番《巨人》をファースト・トランペットで全楽章吹いて、それでトランペット奏者になりたいと思ったんです。

児玉 金管奏者としては、マーラーはめちゃくちゃカッコいいですよね! マーラーは全曲やりたいし、もちろんベートーヴェンも! それにモーツァルトなんかも、突き詰めて美しいものにしていくというのは、ソロとオーケストラでは全然違うと思うんです。僕はまだあまりオーケストラの経験がないので、これからじっくりと挑戦していきたいです。

田代 マーラの《巨人》のトランペットって、感情的にも音楽的にもけっこう発散する場所がいっぱいある。それって児玉さんの今のクールなスタイルと真逆だから、今僕は、彼の内に秘めた熱いものを感じました。

児玉 いや、全金管奏者は絶対マーラーやりたいと思いますよ(笑)。

トランペットがつないだご縁に胸が熱くなる対談でした

後編に続く

田代万里生さんの出演情報
ミュージカル『エリザベート』

【東京公演】
日程 2025年10月10日(金)~11月29日(土)
会場: 東急シアターオーブ 

【札幌公演】
日程: 2025年12月9日(火)~18日(木)
会場: 札幌文化芸術劇場 hitaru

【大阪公演】
日程: 2025年12月29日(月)〜2026年1月10日(土)
会場: 梅田芸術劇場 メインホール

【福岡公演】
日程: 2026年1月19日(月)~31日(土)
会場: 博多座

出演:

エリザベート(ダブルキャスト) 望海風斗/明日海りお 

トート(トリプルキャスト) 古川雄大/井上芳雄(東京公演のみ)/山崎育三郎(北海道・大阪・ 福岡公演のみ) 

フランツ・ヨーゼフ(ダブルキャスト) 田代万里生/佐藤隆紀 

ルドルフ(ダブルキャスト) 伊藤あさひ/中桐聖弥 

ルドヴィカ/マダム・ヴォルフ 未来優希 

ゾフィー(ダブルキャスト) 涼風真世/香寿たつき 

ルイジ・ルキーニ(ダブルキャスト) 尾上松也/黒羽麻璃央

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児玉隼人さんの出演情報
児玉隼人トランペットリサイタル

日程: 2026年9月13日(日) 14:00開演

会場: サントリーホール 大ホール

出演: 児玉隼人(トランペット)、北村朋幹(ピアノ)

曲目: ストラヴィンスキー(フリーマン=アットウッド編)/《プルチネッラ》組曲、細川俊夫/トランペット協奏曲《霧のなかで》、ヒンデミット/ トランペット・ソナタ、武満徹/径(みち)-ヴィトルド・ルトスワフスキの追憶に-、リゲティ(E.ハワース編)/マカーブルの秘密、ピルス/トランペット・ソナタ、ほか

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田代万里生
田代万里生 ミュージカル俳優

東京藝術大学音楽学部声楽科テノール専攻卒業。3歳からピアノを学び、7歳でヴァイオリン、13歳でトランペットを始め、15歳からテノール歌手の父より本格的に声楽を学ぶ。1...

進行・まとめ
室田尚子
進行・まとめ
室田尚子 音楽ライター

東京藝術大学大学院修士課程(音楽学)修了。東京医科歯科大学非常勤講師。オペラを中心に雑誌やWEB、書籍などで文筆活動を展開するほか、社会人講座やカルチャーセンターの講...